すばる望遠鏡について

観測装置

ファイバー多天体分光器 FMOS(Fiber Multi-Object Spectrograph)

ファイバー多天体分光器 FMOS(Fiber Multi-Object Spectrograph)

FMOS(Fiber Multi-Object Spectrograph: ファイバー多天体分光器)はすばる望遠鏡の第二期共同利用観測装置で、光ファイバーを用いて数多くの天体を同時に分光観測することを可能にした近赤外線分光器です。FMOS の主な構成要素は、1) 広視野補正光学系とファイバー位置制御装置 Echidna (エキドナ) を備える赤外線主焦点ユニット、2) 全長約 70 メートルにもおよぶ 400 本の光ファイバー、3) 2基の分光器、です。エキドナは約 15 分という短時間に 400 本のファイバーをそれぞれ 10 マイクロメートルの精度で配置できます。FMOS の登場により、すばる望遠鏡の近赤外線領域での分光観測の観測効率はこれまでの 10 倍以上になりました。広視野で同時に多天体分光観測ができるので、今まで数多くの近赤外線分光データを得ることが難しかった遠方の銀河や暗い活動銀河、星形成領域や褐色矮星などについて、より正確な統計的な観測研究が可能になります。

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2009年4月 FMOSがファーストライト!

ファイバー多天体分光器 FMOS(Fiber Multi-Object Spectrograph)

Fast Fact

特徴:
  • 広い視野をカバーし、複数の天体を一度に観測できる近赤外線分光装置です。
  • 400 本の光ファイバーは短時間に、遠方の銀河や暗い活動銀河の効率的な同時観測を可能にします。
  • エキドナ (ファイバー位置制御装置) は、ピエゾ圧電素子を用いてファイバーの先端を傾けることにより光ファイバーを精密に配置します。
主な観測対象: 褐色矮星のような近傍の天体から遠方銀河 (赤方偏移1を超える) の微光天体までの大規模・統計的な観測
詳細:
  • ファーストライト:2008年
  • 波長:0.9 マイクロメートルおよび 1.8 マイクロメートル (J , H バンド) の近赤外線
  • サイズと重量:
    • 高さ 2.5 メートルの PIR (赤外線用の主焦点ユニット)、 重さ 2,600 キログラム
    • 5メートル (奥行き) X 2メートル (幅) X 2メートル (高さ) の分光器2基
  • 視野: 30 分角
  • ピクセルスケール / 空間分解能: 1.2” (光ファイバーの直径)
  • 波長分解能: R = 600 (低分散) 、R = 2200 (高分散)
  • 検出器: Hawaii-II 2K x 2K アレイ
  • 構成
    • 赤外線用の主焦点ユニット
    • 400 本の光ファイバーユニット
    • 2基の分光器
開発体制:
  • FMOS は日本、オーストラリア、イギリスのチームの協力のもとで開発
  • 赤外線用の主焦点ユニット: 京都大学の研究グループが開発を進め、国立天文台ハワイ観測所がすばる望遠鏡への組み込みおよび改良
  • エキドナ: アングロ・オーストラリアン天文台 (AAO、現オーストラリア天文台) が開発
  • 光ファイバーケーブル: イギリス・ダーラム大学が開発
  • 分光器: 1基は京都大学のチームが、もう1基はイギリス・オックスフォード大学とラザフォード・アップルトン研究所のチームが開発、双方ともハワイ観測所との協力のもとにすばる望遠鏡に組み込みました。