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超巨大ブラックホールの遠吠えが放つニュートリノと電磁波の競演

2018年7月12日 (ハワイ現地時間)

  宇宙から飛来する超高エネルギーニュートリノが検出され、到来方角が特定されました。その方角に望遠鏡を向けたところ、可視光で明るくなった天体が捉えられ、さらにガンマ線でも明るく輝いていることがわかったのです。銀河中心核の超巨大ブラックホールに物質が落ち込み、大量のエネルギーを放射する「ブレーザー」でした。ニュートリノと電磁波の両面から調べることによって、天体の謎が解き明かされていきます。


図1

図1: 2017年9月23日 (日本時間) に検出されたニュートリノ事象 IceCube170922A。水平に IceCube 検出容積内を突き抜けるトラック型で、到来方向が分かりやすいなど好条件で検出されました。(クレジット: IceCube Collaboration)



  ニュートリノは、物質とほとんど衝突を起こさない軽い素粒子です。これまでに、太陽の中心部や、近くで起きた超新星爆発で生じたニュートリノが捉えられ、天体の理解に大きな役割を果たしてきました。ニュートリノを放射する天体現象は他にも予測されていましたが、ニュートリノを捉えることはたいへん困難で、放射源がはっきりわかった天体ニュートリノはなかなか観測されませんでした。

  2017年9月22日 (世界時)、南極点のアムンゼン・スコット基地に置かれたニュートリノ観測実験アイスキューブ (IceCube) によって、宇宙から飛来する超高エネルギーニュートリノが捉えられました。アイスキューブは、南極大陸の氷床の奥深くに検出器を埋め、ニュートリノが氷の中でまれに出す光を捉える観測施設です。アイスキューブには、千葉大学グループが中心となって開発した、ニュートリノの到来方向をリアルタイムで測定するシステムが組み込まれています。このシステムによって、ニュートリノの放射源の方角が1度角ほどの精度で求められました。超高エネルギーニュートリノの発生メカニズムは解明されておらず、電磁波での追跡観測によって発生源を特定することがたいへん重要です。そこで、アイスキューブの観測結果は、すぐさま世界中の天文台に伝えられました。

  すばる望遠鏡も参画する大学間連合による電磁波対応天体追跡チーム (OISTER) も、その方角を観測しました。しかし、位置の誤差範囲は広く、含まれる天体は数知れません。そこでチームは、ニュートリノを発生させると推定されていた、銀河中心の超巨大ブラックホールへ物質が流入して輝く「ブレーザー」に注目し、領域内のブレーザーの変動を探しました。その結果、TXS 0506+056 と名付けられていたブレーザーが、2日間の観測で、通常よりも3倍以上明るく、また大きく変動していることを見つけました。同じ時期に、高エネルギー電磁波であるガンマ線領域でも、この天体が通常よりもずっと明るく輝いていたことがわかりました。ニュートリノ検出と、このような電磁波での変動が、偶然に同じ方向で観測される確率はとても低く、これらは同じ天体が発したものと考えられます。

  ニュートリノと電磁波。性質も発生のしかたも異なる両方の情報を総合的に見ることで、天体で起きている現象をよりよく理解することができます。昨年、中性子星の合体で生じた重力波とそこからの電磁波を観測した例に続き、天体を多面的な観測によって理解するマルチメッセンジャー天文学を大きく進展させる成果です。研究に参加したハワイ観測所長の吉田道利さんは、「今回の重要な発見について、IceCube と OISTER のすべてのメンバーと喜びを分かち合いたいと思います。またすばる望遠鏡がその高い観測能力を活かして今回の発見に貢献できたことを誇りに思っています。マルチメッセンジャー天文学の時代において、様々な観測施設間の協力はますます重要になってきます。今回のチームでまた将来新たな研究に取り組むことを楽しみにしています」とコメントしています。


図2

図2: 候補天体とすばる望遠鏡などの観測視野。IceCube-170922A の到来方向はオリオン座にあり、長径2度、短径1度ほどの誤差を持っていました (緑色の楕円)。その中に、ブレーザー候補 (BROS sources) が7個ありました。(クレジット: 東京大学/広島大学)



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