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超広視野多天体分光器 PFS の「メトロロジカメラ」がハワイ観測所へ到着

2018年4月25日 (ハワイ現地時間)

  東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) を中心とする国際チームが開発を進めている超広視野多天体分光器 PFS (Prime Focus Spectrograph) の「メトロロジカメラ (図1図2)」が、ハワイ現地時間の2018年4月20日付で、共同開発のパートナーである台湾の中央研究院天文及天体物理研究所 (Academia Sinica, Institute of Astronomy and Astrophysics - ASIAA) から国立天文台ハワイ観測所へ到着しました (図3)。

  山麓施設での簡易試験の後にすばる望遠鏡のあるマウナケア山頂へ輸送され、6月には望遠鏡に搭載しての動作確認試験が実施される予定です。今回の「メトロロジカメラ」の到着は、PFS を構成する装置の中で最初のハワイ到着であり、PFS の装置組み立てが最終段階に入ってきたことを意味する非常に重要なマイルストーンです。


図1

図1: メトロロジカメラの写真。銀色のフレーム内に収まっているのがメトロロジカメラ。(クレジット: PFS Project)


超広視野多天体分光器 PFS

  すばる望遠鏡の次世代観測装置の一つとして、2019年内の試験観測開始、2021年内の科学運用開始を目指し開発が進められています。主焦点 (図2) の直径 1.3 度の視野内に配置された約 2400 本の光ファイバー各々が銀河や星といった天体からの光を捕らえ、「青」「赤」「近赤外」3つのカメラからなる分光器システムで 380 ナノメートルから 1260 ナノメートルの波長範囲に及ぶスペクトルを一度に取得することが出来ます。

  PFS は、宇宙の成り立ちと運命を探るため、「宇宙の国勢調査」を行うとする SuMIRe (すみれ) 計画 (SuMIRe; Subaru Measurement of Images and Redshifts) の一翼を担う観測装置です。すばる望遠鏡の 8.2 メートル口径による集光力と主焦点の広い視野というユニークな特徴を最大限に生かして、既に稼働中の超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC; ハイパー・シュプリーム・カム) と共に、遠方銀河と星の広域巨大統計から、ダークマター、ダークエネルギーの正体や、多種多様な銀河の形成、進化の物理過程に迫ります。


図2

図2: PFS の概念図。図中の右下が「メトロロジカメラ」で、すばる望遠鏡のカセグレン焦点に設置される。(クレジット: PFS Project/国立天文台)



図3

図3: 輸送されたメトロロジカメラ。(クレジット: PFS Project/国立天文台)


メトロロジカメラとは

  PFS では、複数のサブシステムが望遠鏡と連携して動作し観測を行います。メトロロジカメラは、PFS のサブシステムの一つで、台湾中央研究院天文及天体物理研究所 (ASIAA) が開発を担当し、すばる望遠鏡のカセグレン焦点に取り付けられるカメラです。シュミット望遠鏡を模した光学系と 50 メガピクセルに及ぶ高解像度の CMOS 検出器 (図4) により、光ファイバーの並んだ主焦点面を撮像し光ファイバーの現在位置を正確に測定します。この位置情報を元にそれぞれのファイバーが目標位置からどれだけ離れてしまっているかを割り出し、「ファイバー位置制御装置」に伝え、ファイバーをその分だけ動かすという仕組みです。メトロロジカメラは一度の露出で全てのファイバーの位置を測れるので非常に効率が良く、「メトロロジカメラ」での測定と「ファイバー位置制御装置」の駆動を数回繰り返しながらも、2分以内にはファイバーの配置を全て終えることができます。ファイバー配置が完了したら、分光器のシャッターを開け、露出を開始します。天体からの光は光ファイバーを通って分光器に到達、検出器にスペクトルとして記録されるのです。

   つまり、約 2400 本の光ファイバーを、10 数マイクロメートルという精度で観測したい星や銀河へ向け、同時に分光観測する PFS において、ファイバーを天体に向ける過程で、1本1本のファイバーの位置を正確かつ素早く測定する「メトロロジカメラ」が重要な役割を果たすのです。


図4

図4: メトロロジカメラに用いられる CMOS 検出器。(クレジット: PFS Project)


今後の予定

  今回、PFS サブシステムの先陣を切ってハワイ観測所へ納入されたメトロロジカメラですが、納入後はまずハワイ観測所の山麓施設にて簡易試験が行われます。これは、輸送前と同じように問題なく機能するかの確認です。その後、すばる望遠鏡のあるマウナケア山頂へ輸送されてより綿密な試験が行われたのち、6月には望遠鏡に取り付けるためのインターフェース確認と実際に望遠鏡に取り付けての基本動作確認を実施。引き続き7月には、光学調整の後に画像データを実際に取得して、メトロロジカメラから見える主焦点面について詳しい調査が行われます。こうした試験と並行して、メトロロジカメラを望遠鏡の制御システムを通して操作できることも実証していきます。観測を遂行する上で望遠鏡と PFS の連携した動作が重要な鍵となるためで、現在、PFS 制御系ソフトウェアの準備も急ピッチで進められています。

  輸送準備から輸送、輸送後の試験、望遠鏡との統合、という一連の流れは、メトロロジカメラに限らず他の PFS サブシステムにも同様に当てはまります。つまり、今回のメトロロジカメラの到着はプロジェクトにとって、他の PFS サブシステム統合の礎となる非常に重要なマイルストーンであり、十分な足がかりを築くべく、PFS プロジェクトに参加する各研究機関がが連携して準備と作業を進めていく予定です。


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