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木星探査機「ジュノー」とすばる望遠鏡の強力タッグで明らかにする木星大気の「3次元構造」

2017年7月10日 (ハワイ現地時間)

  2016年7月に木星に到着し、観測を進めている米国 NASA の木星探査機「ジュノー (Juno)」の研究を、すばる望遠鏡が地球から支えています。すばる望遠鏡の中間赤外線カメラ COMICS による高解像度画像が木星の対流圏〜成層圏での温度や雲の厚さなどの情報を提供し、「ジュノー」が観測する大気深部や高高度の熱圏などのデータと合わせて、木星大気の「3次元構造」に迫ることができるのです。


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図1: すばる望遠鏡搭載の中間赤外線カメラ COMICS が2017年5月18日に撮影した木星。波長 8.8 マイクロメートルで撮影したこの画像は、木星の対流圏の温度やアンモニアでできた雲の厚さを得るのに有効です。さらに、「ジュノー」が7月11日に観測を行う大赤斑やその周辺の詳細な構造も映し出されています。また、2017年1月の観測データに基づく動画はこちらでご覧いただけます。(クレジット:国立天文台/ジェット推進研究所)


  「『ジュノー』との協調によって最大限の成果が得られるように、すばる望遠鏡を使った木星観測のタイミングを調整しました」と語るのは、ジェット推進研究所 (JPL) のグレン・オールトンさんです。オールトンさんは「ジュノー」ミッションの地上支援観測のコーディネーターであり、すばる望遠鏡を使った木星観測プログラムの研究代表者でもあります。

  「2017年5月には、『ジュノー』第6回最接近観測との同時観測をすばる望遠鏡で行い、大赤斑とその周辺の画像とスペクトルを得ることができました (図1)。この画像から、大赤斑の中心部ほど冷たく曇っていて、外側ほど暖かく晴れていることが明らかになっています。風が中心部で激しく湧き上がり、周辺部では沈み込んでいるのでしょう。また、大赤斑の北西側の領域では大気の激しい擾乱もみられます」とオールトンさんが解説します。また、共同研究者の藤吉拓哉さん (ハワイ観測所) は、「COMICS に搭載されている多彩なフィルターは、木星大気を調べるのにとても有効です」とすばる望遠鏡を使った研究のメリットを強調します。

  特に5月の観測は、「ジュノー」の「第6回最接近観測」をカバーする形で行われ、「ジュノー」が通過する直下領域を含む木星雲層~成層圏大気の温度場と雲層厚、およびその運動と時間変化を与えることができました。「ジュノー」が観測する初の深部情報 (100 気圧域にまで達する) などとの結合で、木星大気の「3次元構造」を初めて得ることが可能となります。好天に恵まれたこの観測で、すばる望遠鏡はその大口径を生かし約 1000 キロメートルの空間分解能を得ることができました。これは「ジュノー」の木星最接近時に得られるマイクロ波観測の空間分解能にも匹敵するものです。

  木星は太陽系で最も激しいオーロラ発光をその南北両極に擁します。これは電離したイオ噴出ガスが駆動するものです。1月と5月の COMICS による観測では、この発光高度 (およそ 500-3000 キロメートル) よりも低い成層圏高度でメタン発光が見られることも明らかにしています。「これは、オーロラを光らせる高エネルギー粒子が大気へ深く侵入し、木星大気を温めまた C・H 系有機物を生成する化学反応を引き起こすことを示しています」と語るのは、すばる望遠鏡を使った木星観測プログラムのもう一人の研究代表者である笠羽康正さん (東北大学教授) です。「すばる望遠鏡や『ジュノー』に加え、私共も中核を担う宇宙航空研究開発機構 (JAXA) の『ひさき』衛星や東北大学のハレアカラ望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡・X 線望遠鏡群らとの組み合わせで、オーロラ現象と大気の加熱・化学の理解へつなげることができます。日本が搭載機器提供で参加する予定の欧州の木星探査計画『ジュース (JUICE)』にもつながる研究となります」と笠羽さんは説明します。

  すばる望遠鏡と「ジュノー」の協調観測には、JPL、東北大学、国立天文台ハワイ観測所に加えて、JAXA、理化学研究所、情報通信研究機構、京都産業大学のメンバーも参加しています。探査機、宇宙望遠鏡・人工衛星、そしてすばる望遠鏡を始めとする地上望遠鏡の強力タッグで、謎に包まれている木星大気が解き明かされていきます。



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