観測成果

表面での爆発から星の死への旅立ち

2017年10月4日 (ハワイ現地時間)

  東京大学の大学院生と研究者、京都大学や国立天文台などの研究者からなる研究グループは、すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (HSC) を用いた観測で、爆発直後の Ia 型超新星を捉えることに成功しました。この Ia 型超新星の明るさと色の時間変化を詳しく解析した結果、この超新星のふるまいは、白色矮星の表層にある薄いヘリウム層の底で激しい核融合反応が始まり、その影響で白色矮星の内部で衝撃波が内向きに伝わり、中心で核融合反応が起きて星全体が爆発するという機構で説明できることがわかりました。この機構は Ia 型超新星の爆発機構として提案されていた説の一つですが、それに対する最初の確たる観測的証拠であり、極めて重要な成果です。


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図1: すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam が撮影した爆発直後の Ia 型超新星。文字や矢印を省いた画像はこちら。(クレジット:東京大学/国立天文台)


  星にはその生涯の最後に大爆発を起こすものがあります。重い星の爆発はよく言及されますが、太陽のようなそれほど重くない星が進化した結果残される、炭素と酸素からなる高密度の星 (白色矮星、注1)も、爆発に転じることがあります。白色矮星が連星をなしている場合、相手の星 (伴星) から物質を受け取って質量を増やすことで、中心部で激しい核融合が始まる可能性があるのです。この激しい核融合により、星全体が吹き飛ぶ Ia 型超新星 (注2) 爆発が引き起こされると考えられています。

  Ia 型超新星は非常に明るく、かつどれも似たような明るさを持つことから、宇宙論的な距離を測定するための指標となります。この性質を利用して宇宙の加速膨張が発見され、2011年にはこの成果に対してノーベル物理学賞が授与されました。しかしながら Ia 型超新星爆発がどのように始まるかは詳しくわかっていません。その解明のためには、爆発が起きた直後の最初の数日から超新星を観測する必要がありますが、Ia 型超新星が起きる頻度は銀河1個あたり100年に1度ほどと極めて稀な現象なので、これまでの観測ではそのような爆発直後の超新星を見つけることは困難でした。

  すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam (ハイパー・シュプリーム・カム、HSC) は、大望遠鏡では世界一の視野の広さを誇るカメラです。HSC により、従来よりも圧倒的に多くの銀河を一度に観測し、短時間の観測で多くの超新星を見つけることが可能となりました。また、HSC で取得される大量の画像データを即時に処理し、その中から超新星をいち早く発見するシステムを開発することで、爆発から数日以内の超新星をリアルタイムに発見することが可能となりました。

  今回、東京大学の大学院生と研究者、京都大学や国立天文台などの研究者からなる研究グループは、HSC と超新星発見のための専用システムを用いた観測を開始し、2016年4月に検出された 100 以上の超新星の中から、爆発して1日以内と推定される Ia 型超新星を発見しました。さらに、発見後に世界各地の望遠鏡で追観測を行うことで、この超新星爆発の初期のようすを明らかにしました。

  観測結果から、この超新星は、これまでに観測されてきた Ia 型超新星の変化から推測されていたよりもずっと早い時期に明るくなっていたことがわかりました。この原因として、爆発で飛び散った物質と伴星とが衝突し、高温になった部分を見ているとも考えられますが、この仮説に基づく数値シミューションからは青白い光が予想されるのに対し、今回すばる望遠鏡で観測された色は赤く、このモデルでは説明できません。

  そこで研究チームは、初期に起こりうる他の仮説として、白色矮星の表層にあるヘリウムが核融合反応 (注3) を起こした場合を考え、その明るさと色の変化をスーパーコンピュータ「アテルイ」(注4) を用いて計算しました。その結果、すばる望遠鏡で観測された最初期の急激な増光と色を説明できることがわかりました。ヘリウム層における核融合反応では、カルシウムやチタンが合成されることが期待されますが、この超新星が最大光度に達したときに撮られたスペクトル (注5) にカルシウムやチタンによる吸収線が強く見られたことも、初期の増光がヘリウム核融合反応によるものであることを裏付けます。初期増光の後には、この超新星は Ia 型超新星としては平均的な明るさの時間変化を示しています。これは、ヘリウムの核融合反応がきっかけで衝撃波が白色矮星の中心に向けて伝わり、中心部で炭素の核融合反応が生じて星全体が爆発したと考えると説明できます。ヘリウム層の爆発がどのように観測に現れるのかを理論的に示し、観測で実証したのも、今回が初めてです。


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図2: ヘリウム層で核反応が起き、中心に衝撃波が伝わって炭素の核反応が始まった直後の様子 (想像図)。(クレジット:東京大学)


  今回の観測成果によって、Ia 型超新星爆発の始まり方の解明に向けて一歩前進しました。観測を継続することによって今後さらに多くの超新星を検出し、その中からより初期段階の超新星を探し出したいと、研究チームは考えています。宇宙全体の歴史や構造を理解する有用な道具になっている Ia 型超新星の爆発機構の解明を進めることで、宇宙論的な距離測定の精度を高めることにも役立つと期待されます。


  この研究成果は、英国の科学誌『ネイチャー』に2017年10月5日付で掲載されます (Jiang et al. 2017, "A hybrid type la supernova with an early flash triggered by helium-shell detonation", Nature)。この研究成果は、科学研究費補助金 16H01087, 26287029, 26800100, 17H02864, 6H06341, 16K05287, 15H02082, 26400222, 16H02168, 17K05382 によるサポートを受けています。また、以下の研究費のサポートも受けています。The World Premier International Research Center Initiative (WPI Initiative), MEXT, Japan; The research grant program of the Toyota foundation (D11-R-0830); The support from the US National Science Foundation through award AST-1615455; The research grant (13261) from VILLUM FONDEN.



(注1) 白色矮星
核融合反応が終わった星の中心核。中心核形成後に外層は剥がされて、中心核のみが残り白色矮星となります。非常に高密度で、質量は太陽と同じくらいにもかかわらず、大きさは地球ほどしかありません。

(注2) Ia 型超新星
超新星のうちそのスペクトルに水素によるスペクトル線が見られないものがI型と分類され、さらに I 型のうちケイ素のスペクトル線が強いものが Ia 型と分類されます。白色矮星が核融合反応によって爆発すると大量のケイ素が合成されることが期待されるので、Ia 型超新星は白色矮星の爆発と考えられています。

(注3) ヘリウムの核融合反応
二つのヘリウム原子核が衝突し、くっついて不安定なベリリウム原子核ができます。この不安定な原子核が再びヘリウム原子核に壊れる前に、もう一つのヘリウム原子核が衝突して炭素原子核になります。この反応により大量のエネルギーが放出されるので、白色矮星の表面でこの反応が起こると温度が高くなることで他の核融合反応も進み、さらに重い原子核であるチタンやカルシウムなども合成されます。

(注4) アテルイ
国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用するスーパーコンピュータ Cray XC30 の愛称。2013年4月より利用開始され、2014年9月のアップグレードで理論演算性能が約2倍に向上しました。天文学専用のスーパーコンピュータとしては世界最速の性能をもつアテルイは、「理論天文学の望遠鏡」として活躍しています。

(注5) スペクトル
光の強度を波長の関数として表したグラフ。スペクトル線を観測すると、その波長と強度から、光を発する物質に含まれる元素の種類と量、そして温度や密度が推測できます。


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