すばる望遠鏡の観測装置

 すばる望遠鏡が挑もうとしている宇宙は、星の形成と死、銀河の衝突など、多様な現象に満ちています。単に天体写真をとるだけでなく、これらの現象を科学的に調べるためには、工夫をこらした観測装置が必要です。

 天体観測には大きく分けて、天体の形状や明るさを調べるために天体のイメージをとる「撮像観測」と、天体の温度や組成を調べるために天体からの光を細かく分けて測定する「分光観測」の2種類があります。また、可視光と赤外線では、宇宙の姿は大きく異なります。可視光では主に、太陽のような恒星や、その集団である銀河が見えます。一方、赤外線は、星形成領域のような温度の低い天体や、宇宙空間の塵に隠れて可視光では見えない天体の観測に適しています。

 現在すばる望遠鏡では、4つの焦点で6つの観測装置と1つの補助観測装置が使用されています。これらの多彩な観測装置によって可視光から赤外線までの波長をさまざまな方法で観測することが可能になります。

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利用中の観測装置

超広視野主焦点カメラ HSC (Hyper Suprime-Cam)

  すばる望遠鏡の主焦点に新たに搭載され、2014年から共同利用観測を開始した HSC (Hyper Suprime-Cam) は、満月9個分の広さの天域を一度に撮影できます。独自に開発した 116 個の CCD 素子を配置し、計8億7000万画素を持つまさに巨大な超広視野デジタルカメラです。HSC の持つ広い視野を活かし、重力レンズ効果を用いたダークマター分布の直接探査などの大規模な観測プログラムが進められています。

 

トピックス (2013年7月) 新型の超広視野カメラが開眼、ファーストライト画像を初公開



多天体近赤外撮像分光装置 MOIRCS (Multi-Object Infrared Camera and Spectrograph)

 近赤外線用としては巨大な 400 万画素の検出器を2つもち、広い視野を撮像する能力をもったカメラです。また、口径が 8~10 メートル級の大望遠鏡では世界で初めて、近赤外波長域で一度に多数の天体の分光観測を可能にした装置です。これらの機能により、観測の効率が劇的に向上し、遠方銀河の研究に威力を発揮しています。

 

トピックス (2006年2月) MOIRCS - すばるの新しい「赤外線の瞳」 ついに始動



近赤外線分光撮像装置 IRCS (Infrared Camera and Spectrograph)

 波面補償光学装置を生かした高い解像力と感度による撮像観測や、20,000 分の 1 の波長差を識別できる分光観測を行う、すばる望遠鏡の基本装置です。ハワイ大学との共同研究によって開発・製作されました。左は IRCS の撮像光学系。 IRCS は、すばる望遠鏡のナスミス焦点の片方 (赤外線)装着されます。

 

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トピックス (2000年6月) IRCS がファーストライト!



冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS (Cooled Mid Infrared Camera and Spectrometer)

 マウナケア山頂は空気が薄く非常に乾燥しているため、湿度の高いところではできない中間赤外線による観測が可能です。 COMICS はマウナケアの優れた中間赤外線透過率を生かすための分光撮像装置です。惑星系の形成過程や系外銀河の大規模な星形成現象、また星間空間の固体成分である塵 (ダスト) の性質や形成過程を調べることができます。

 

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トピックス (2000年1月) COMICS がファーストライト!



微光天体分光撮像装置 FOCAS (Faint Object Camera And Spectrograph)

 可視光で高い感度の観測を行う基本装置です。視野内の 50 天体程度のスペクトルを同時に撮影できる機能を使用することにより、宇宙の果て近くにある銀河までの距離を効率よく調べることができます。 FOCAS は、すばる望遠鏡のカセグレン焦点に装着されます。

 

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トピックス (2000年3月) FOCAS がファーストライト!



高分散分光器 HDS (High Dispersion Spectrograph)

 HDSは、可視光で 10 万分の1の波長差を識別できる装置です。古い星の元素組成を調べて宇宙における元素の進化を研究したり、クエーサーの吸収線を調べて銀河間ガスの組成や物理状態を調べる研究に用いられます。重さが6トンもあり、すばる望遠鏡のナスミス焦点の片方 (可視光) に常設されています。

 

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トピックス (2000年8月) HDS がファーストライト!



188 素子波面補償光学装置 AO (Adaptive Optics)

 すばる望遠鏡では、 1990 年代後半に第一世代の 36 素子補償光学系を開発、世界中の天文学者に公開してきました。さらに性能を格段に向上させた第二世代の 188 素子補償光学系は 2006年10月9日に試験観測に成功、現在は共同利用観測によって活用されています。この 188 素子補償光学系にはレーザーガイド星生成システムが備わっており、明るいガイド星が観測天体の近傍にない場合でも、補償光学系を利用することができます。188 素子波面補償光学装置は、すばる望遠鏡のナスミス焦点の片方 (赤外線) に装着されます。

 

観測成果 (2006年11月) AO がファーストライトを迎えました



現在の観測装置の波長と波長分解能の関係

 すばる望遠鏡は、可視光から赤外線までカバーする撮像用カメラと分光器をもっています。FOCAS や IRCS のように、撮像と分光観察の両方の機能を備えた装置もあります。図の上で重なっている場合でも、それぞれの装置には、視野の広さや観測対象などに大きな違いがあり、役割分担しています。

 

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利用を終了した観測装置

主焦点カメラ Suprime-Cam (Subaru Prime Focus Camera)

 すばる望遠鏡は口径8メートル級の望遠鏡のなかで唯一、視野の非常に広い主焦点で観測可能な望遠鏡です。この観測装置は、 4096 × 2048 画素という大きな CCD を 10 個も並べた、 8000 万画素のデジタルカメラで、満月とほぼ同じ大きさの 34 分角 × 27 分角という広い視野を一度に撮像すること ができます。広い天域を能率よく観測することで、遠方銀河の探査や暗黒物質の研究、太陽系外縁部の小天体の探査などに威力を発揮する装置です。

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トピックス (2000年7月) 主焦点に搭載した Suprime-Cam



ファイバー多天体分光器 FMOS (Fiber Multi-Object Spectrograph)

  FMOS はすばる望遠鏡の第二期共同利用観測装置で、光ファイバーを用いて数多くの天体を同時に分光観測することを可能にした近赤外線分光器です。FMOS の主な構成要素は、1) 広視野補正光学系とファイバー位置制御装置 Echidna (エキドナ) を備える赤外線主焦点ユニット、2) 全長約 70 メートルにもおよぶ 400 本の光ファイバー、3) 2基の分光器、です。エキドナは約 15 分という短時間に 400 本のファイバーをそれぞれ 10 マイクロメートルの精度で配置できます。FMOS の登場により、すばる望遠鏡の近赤外線領域での分光観測の観測効率はこれまでの 10 倍以上になりました。広視野で同時に多天体分光観測ができるので、今まで数多くの近赤外線分光データを得ることが難しかった遠方の銀河や暗い活動銀河、星形成領域や褐色矮星などについて、より正確な統計的な観測研究が可能になります。

 

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トピックス (2009年4月) FMOS がファーストライト!



コロナグラフ撮像装置 CIAO (Coronagraphic Imager with Adaptive Optics)

 明るい中心天体の光を遮ることによって、そのすぐ近くにある暗い天体のシャープな画像を取得することに目的を絞った観測装置です。カセグレン焦点に搭載され、赤外線を観測します。若い星のまわりで惑星が誕生する現場や、年老いた星から物質が放出される様子をとらえることができます。

 

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トピックス (2000年4月) CIAO がファーストライト!



36 素子波面補償光学装置 AO (Adaptive Optics)

 すばる望遠鏡はドーム内の大気のゆらぎを押さえることにより、0.2 秒角という高い解像力を実現しました。しかし、これでもまだ解像力は大気のゆらぎによって決まってしまいます。大気のゆらぎを実時間で補正することにより、波面補償光学装置は主鏡の直径によって決まる解像力 (回折限界) を実現する装置であり、この装置を使用すれば 0.06 秒角という、ハッブル宇宙望遠鏡に匹敵する解像力が得られます。 36 素子の AO は、すばる望遠鏡のカセグレン焦点に装着されます。

 

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観測成果 (2000年12月) AO がファーストライトを迎えました



OH夜光除去分光器 OHS (OH-Airglow Suppressor)

 上層大気の OH 分子が出す夜光を取り除くことで、高い感度を実現する分光器。遠方の銀河や褐色矮星などの暗い天体の粗い分光観測に特に能力を発揮します。左はファーストライトで活躍した OHS の撮像部の CISCO。OHS は、すばる望遠鏡のナスミス焦点の片方 (赤外線) に装着されます。

 

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トピックス (2000年5月) OHS がファーストライト!





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