観測成果

ガンマ線バーストは極超新星が起源?!
すばるによる SN 2003dh/GRB 030329 の観測

2003年6月13日

 国立天文台、東京大学、テキサス大学 (米国) などからなる観測グループが、 ガンマ線バースト GRB 030329 (超新星 SN2003dh)の分光観測に成功し、この 天体が極超新星であることを明瞭に示しました。

 この天体は、2003年3月29日にガンマ線バースト探査衛星HETE-2 によって最初 に捕らえられ、GRB 030329と名づけられました (注1)。これに対応する天体が 可視光でも見つかり (注3)、追跡観測によってIc型超新星と似たスペクトル示すこ とが判明しました。このため、同じ天体に対して SN 2003dh という超新星と しての名前もつけられました。ガンマ線バーストという現象は、発見から30年 余り経った現在でも起源が良くわかっておらず、可視光でもとらえられたこの天体に注目が集まっています。

  観測は、すばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置FOCASを用いて、ハワイ時間 2003年5月7日及び8日に行われました (注2)。に、すばるで得られたこの天体 (SN 2003dh/GRB 030329) のスペクトルを示しました (黒線)。では、過去に見つかった他の超新星と比較していますが、これらが互いによく似たスペクトル の特徴をもっていることがわかります。SN 1997ef や SN 1998bw は、爆発のエネ ルギーが通常の超新星よりも一桁ほど大きく、極超新星とも呼ばれています (注4)。

 過去にもガンマ線バーストと超新星の繋がりを示唆する観測例は存在しますが、 スペクトルの一致がこれだけ明瞭に捕らえられたのは、今回の天体が初めてであり、ガンマ線バーストの起源に迫る重要な観測結果です (注5)。

 これらの観測結果については、国際天文連合回報 (IAUC) 8133号で5月17日に 速報されました。現在、より詳しい解析が進められており、その成果も今後発表していく予定です。

 


 注1:ガンマ線は、最も波長の短い (エックス線よりもより短い) 電磁波です。 このガンマ線で突然明るく輝く天体現象があり、ガンマ線バーストと呼ばれます。


 注2: 観測では同時に偏光強度も測定されましたが、ここで紹介する内容には 偏光に関するものは含まれていません。


 注3: 東京工業大学の研究者による残光の画像

http://www.hp.phys.titech.ac.jp/nkawai/030329/


 注4: Ia型を除く、Ib型、Ic型およびII型の超新星は、質量の大きな恒星が進化の最後の段階で起こす、激しい爆発現 象です。極超新星は、その中でも際立って爆発エネルギーが大きいもので、太 陽より20倍以上も重い恒星が引き起こす爆発であると考えられています。


 注5: この天体は、4月上旬には米国などの研究グループによって観測され、そ の時のスペクトルは SN 1997ef よりも SN 1998bw によく似ているとされまし た。一方、約1カ月後に行われた今回の観測の結果では 1997ef への類似性が 際立っています。このようなスペクトルの変化は、超新星爆発の外部と内部で の構造の違いを反映しているとも考えられますが、詳しい解釈は今後の解析を待つ必要があります。


 図:横軸が波長、縦軸が光の強さ。今回観測した天体(SN 2003dh/GRB 030329) のスペクトルを黒線で、過去に見つかった極超新星 SN1997ef と SN1998bw を、 それぞれ緑と赤の線で示してあります。590-660ナノメートルの一階電離ケイ素、740-800ナノメートルの中性酸素、800-890ナノメートルの一階電離カルシ ウムをそれぞれ起源とする特徴的なパターン (短波長側が凹、長波長側が凸) に注目すると、今回の天体が極超新星(とくにSN1997ef)によく似ていることが わかります。

 

 

 

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