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すばるの夏休み、職員は大忙し (前編)

2010年11月1日

  2010年の夏、7月から9月にかけて、すばる望遠鏡では夜間の観測と昼間の見学プログラムがお休みになりました。いわば、すばるの夏休み。どのような宿題が待ち受けていたのでしょうか?ハワイ観測所の職員に「夏の思い出」を聞いてみました。

――これまで1年 365 晩を通して観測が行われてきたすばるで、この夏こんなに長いお休みをとったのはどうしてですか?

  すばるでは、ほぼ3年に1度、主鏡のお化粧直し「再蒸着作業」を行っています。本来は昨年がその時期にあたっていたのですが、別の大がかりな手入れ作業が今年予定されていたためにまとめて行ったのです。ただし内容がとても盛りだくさんになったので、いろいろな応援の人手を得ても3ヶ月間のお休みが必要でした。


ずらりと並ぶアクチュエータの
オーバーホール

――それはどんな作業でしたか?

  まず7月には主に古い装置の取り外しと、主鏡を支えているアクチュエータのうち、普段は交換できないところのものを外してオーバーホールをしました。アクチュエータは1本が長さ 150 センチメートル、重さ 80 キログラムもあり、これを下に引き抜いて取り出し、部品交換や調整をしてから戻します。これを1日につき 1-2 本外し、別の 1-2 本を戻すというペースで進めました。今回は全部で 35 本ものアクチュエータを扱いました。何しろ 80 キログラムの精密機械ですから、たいへん慎重に扱わなければなりませんでした。空気の薄い山頂 (気圧が海水面の3分の2) では、ちょっと重いものを持っても息切れしますから、とても大変な作業でした。


――それは大変そうですね。8月にはどのようなことが行われたのですか?

  8月には主に主鏡の再蒸着と、望遠鏡本体の加工をしました。例えば望遠鏡のてっぺん部分の内側を大きく削るなどという作業は、足場を組んで行いました。それらの作業中に何か硬い物を落としてしまったときのために、主鏡が外れている方が安心ですよね。ですからこれらの作業を並行して行ったわけです。主鏡のアルミニウムメッキをやり直す再蒸着作業は今回が6回目、手順についてはけっこう慣れてきたと思います。

望遠鏡のてっぺんでの作業中

  望遠鏡のてっぺんの内部の筒 (内環) を削ったのは、やがて導入される新世代の観測装置が大型であるため、それを入れられるようにするためです。おまけに重さも増えるので、望遠鏡のあちこちにそれと釣り合いをとるための重りも付けました。たくさんのケーブルを外したり、戻したり、やっぱり息切れがして大変な作業でしたよ。

  7月と9月には MLP2 の作業をしました。


エムエルピーツーの正体

――おっと、ちょっと待って下さい。エムエルピーツーってなんですか?

  "Mid Level Processor 2" の略です。望遠鏡のオペレータや観測者がワークステーションから望遠鏡やカメラの操作指示を出したとき、その内容をモーターなどの機械がわかるように翻訳する役割をするものです。それ自身がコンピュータですから、プログラミングが必要です。すばる望遠鏡には3つの MLP がありますが、そのうちの2番目のものは、261 本のアクチュエータについてリアルタイムでの動作をさせる大事なものです。プログラミングでは動作のタイミングがきちんと合うよう、立ち上がりに必要な時間も見ながら指示が送られるようにするところにプログラマーの腕が発揮されます。機械部分への指示が的確に行われることはもちろんですが。


――でもどうしてエムエルピーツーを入れ替えなければならなかったんですか?

  すばる望遠鏡の設計から考えますとほぼ 20 年にもなりますから、建設時に導入した物の中にはもう部品が作られていないものがあります。このため新しいもので、同じ働きをするようにしていなかければなりません。MLP2 の入れ替えは、数年にわたって様々な部品を入れ替える作業の一環です。


主鏡が外されたすばるの姿

――主鏡再蒸着後には,どんなテストをするのですか?

  主鏡から、最終的には天体観測用のカメラや分光器に正しく光が導かれるよう光軸調整をすること、そして望遠鏡がどこを向いても主鏡の形が理想的な面になるよう調整することです。また重いものを一度外してまた取り付けたので、姿勢制御が正しく行われるかどうかも大事なチェック項目です。星の追尾性能が、主鏡を外す前と同じようにきちんと達成されていることが確認できました。ふう・・・。

(後編に続く・・・)



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