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すばる望遠鏡を支えるスタッフ(12)

2006年6月9日

今回は、すばる望遠鏡”第二期観測装置”開発に携わる大学院生の皆さんを紹介しましょう。なお、本インタビューは、2005年暮れに行われました (情報は掲載当時のものです)。


鈴木竜二 (す) すずき りゅうじ:東北大学大学院理学研究科天文学専攻、静岡県出身
小西真広 (こ) こにし まさひろ:東北大学大学院理学研究科天文学専攻、三重県出身
吉川智裕 (よ) よしかわ ともひろ:東北大学大学院理学研究科天文学専攻、愛知県出身
木村仁彦 (き) きむら まさひこ:京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室、神奈川県出身


MOIRCS
鈴木竜司

―― 皆さん、趣味や休日の過ごし方を教えてください

(す)僕はスポーツが好きで、晴れた日はサッカーや野球などの運動をしています。雨のときは読書ですね。
(き)僕はときどきヒロ湾に行って釣りを楽しみます。これまでで最大の獲物は10センチくらいです
(よ)休日は結構寝ていることが多いですが、ドライブしたり山にハイキングや海に泳ぎに行ったりすることもありますね。
(こ)僕は中学一年からやっているトランペットが趣味ですね。今は地元のバンドで演奏しています。


―― 小さいころの夢を教えてください

(よ)小さなころから天文に関わることをやりたいなあと思っていました。
(す)実は、僕はプロのサッカー選手になりたかったんですよね。

―― 皆さんはいつぐらいに天文学に興味を持つようになりましたか?

(き)大学三年生のとき、研究室を選ぶ際に以前から興味のあった天文教室に決めました。
(す)高校二年のときに読んだ雑誌のニュートンに影響を受けましたね。
(よ)小学校のときから地元の科学館に行ったり、天文ガイドなどの天文雑誌を読んでいました。
(こ)父が天文学に興味を持っていたので、小さいころから庭で望遠鏡を使って星を見ていました。ですからきっかけは父親ですかね。

MOIRCS
小西真広

―― 大学院に進もうと思った動機はなんですか?

(こ)ずっと天文学をやりたいと思っていたので、それだけですね。吉川君は?
(よ)一度は就職をしようと思って、就職活動を少ししたんですけど、結局、好きになってやり始めたことなんで、もうちょっとやってやろうというところです。
(す)本当のことをいうと大学のときはほとんど勉強していなかったので、これで大学を終わるのはいかんだろうと思いました。そう考えていた時に大学院の説明会で、「学生と院生はぜんぜん違うから、天文やるなら大学院へ行け」と言われたのと、現在の研究室の先生が来て実験天文学という分野を新しく始めたので、自分で作った観測装置で観測をして天文学をやるというのは面白そうだなと感じたのがきっかけですね。
(き)僕はもともと物を作るのが好きでした。ちょうど、すばる望遠鏡が立ち上がる時期と進路を決める時が重なったので、すばるの観測装置がつくれるという理由で大学院に行くことにしました。

―― 皆さんが大学院生としてハワイ観測所でやっていることを教えてください。

(よ)えーと、僕らは MOIRCS という新しい観測装置を開発しました。MOIRCS は可視光よりも波長が長い近赤外線で宇宙を見るためのカメラです。これまでにない広い視野で撮影でき、また天体の光を色に分ける分光機能も持っている観測装置です。
(よ)僕は特に、観測装置を効率よく円滑に動かすためのシステム、つまり制御ソフトウェアを作りました。装置自体がカセグレン焦点につくものとしては大きく、動かす部分がたくさんあるので、それらを管理するためのシステムが必要だったのです。
(す)実際の観測がスムーズに進むように、効率よくっていうのが大切だよね。
(よ)基本的なことがしっかりとできるのがとても大事ですよ。

MOIRCS
吉川智裕

―― では、小西さんは?

(こ)分光間のスリットマスク交換機構の調整をしていましたよ。
(す)僕がしていたのは、レンズとミラーなどの光学系を正確に並べる地道な作業です。後は、出てきた結果の性能評価などですね。
(き)僕は「ファイバー多天体分光器(FMOS)」、と呼ばれている MOIRCS と同じすばるの第2期共同利用観測装置を作っています。望遠鏡の主焦点に取り付ける FMOS は、光ファイバーを使って400天体を近赤外線領域で同時に多天体分光する装置です。担当しているのは、主に主焦点部の設計で、組み立てて試験をし、調整しています。

―― 装置のステータス(状況)は?

(よ)MOIRCS は2004年の9月に初めて望遠鏡に装着して撮像機能のファーストライトを行いました。そして2005年の1月には分光器のファーストライトを行いました。2006年2月から共同利用によって世界中の天文学者に撮像機能を使ってもらいます。
(き)FMOS は2005年の5月に装置本体がハワイに送られてきて、8月と10月に主焦点部の試験観測をしました。2006年の春に京都大学で製作していた分光器の試験観測を始め、2006年度中には FMOS 全体の試験観測をする予定です。

FMOS
木村仁彦

―― 2つの装置とも開発から5、6年経つのですが、今やっと共同利用という形で使われることについてはどのようにお考えですか。

(す)最初装置を作っている時はちゃんと動いてくれるだろうかとか不安はあったんです。でも、一度動いてしまうと心配も無くなりましたよ。
(よ)確かに自分たちがいないところで使われ始めると、大丈夫かなーというのはありました。
(よ)それに、ソフトウェアに関してはまだまだ改良の余地があるので、早く完成させたいですね。

―― 新しい観測装置でどのような観測がしたいですか。

(す)近赤外線波長を使えば昔の宇宙が見えるので、そこでどういうふうに銀河ができてきたかを知りたいですね。そのためにどういうことを積み重ねていったらいいのかというのを手探りで探しています。
(き)可視光線に比べて近赤外線だと宇宙の初期のころの構造を観測することができます。その中で活動銀河核と呼ばれる天体について分光観測をして、銀河の形成過程を調べようと思っています。
(よ)やっぱり、MOIRCS の開発メンバーの興味は、「宇宙の歴史の中で銀河がどういうふうにできてきたのか」というところでしょうね。
(す)宇宙が始まってから10億年以内の天体、もしかしたら一番最初に生まれた天体が見えるかも知れないです。MOIRCS の波長域だと始まったばかりの宇宙から現在の宇宙まで、銀河の成長のいろんな時期を見られるのです。
(こ)MOIRCS を使って近赤外線で観測すれば、宇宙ができて20から30億年後の銀河がどんな形をし、どういう成長を遂げ今ある姿になったかの手がかりが得られます。

全員

―― 最後に皆さんから一言ずつ、天文学を勉強したいとか観測装置を作りたいと思っているみなさんにアドバイスをください。

(き)日頃から疑問に思った事に関して、なぜそうなっているのかを自分自身で考え、答えを見つけていく経験が新しい装置を開発する時に大切だと思います。
(す)装置を作る時にはソフトウェアとハードウェアがあります。その内、ハードウェアは実際にものがあるので、それをどう動かしたいか、どういうふうに組み上げたいかというのをしっかりと考えないといけないですね。そのためにはものの仕組みが分かっていることと、常識の範囲では考えられないような発想が身についているのが理想的だと思います。
(よ)僕がソフトウェア関係で MOIRCS に関わるようになったのは、大学のときに当時は稀であった Linux という OS を触っていて、徐々にいろいろなソフトウェアを書くようになったことがきっかけです。それが後から天文学をやるのに役に立つとは思っていなかったのですが、なんとなく興味を持って始めたことが後々自分の個性や特技になったりするかも知れないので、1つ興味を持ったことに一生懸命になることもいいんじゃないですか。
(こ)僕は理科が好きだったので、ニュートンや天文ガイドなどの科学雑誌を読んだり、天文に関するTVを見たり、博物館に行ったり、好きなことをやっていました。つまり、好きなことに熱中することが一番いいんだと思います。


すばるトピックス: MOIRCS -すばるの新しい「赤外線の瞳」 ついに始動



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