トピックス
すばる望遠鏡での夏の作業 (2)
2001年10月31日
9月のトピックスでもご紹介しましたとおり、8 月から約 2 ヶ月間、主鏡の再蒸着や装置のメンテナンス作業を行いました。10月15日からは、共同利用観測 (英語のみ) が再開しました。
今回は、望遠鏡本体やコンピュータシステム、それぞれの観測装置について行われた作業について見ていきましょう。
- 望遠鏡について
- コンピュータシステムについて
- 観測装置について
(1) 主鏡の再蒸着作業
再蒸着後の測定の結果、鏡の反射率は波長500ナノメートル (ナノは十億分の一) で91%、波長2,000ナノメートルでは97%と、過去最高の仕上がりであることがわかりました。また、望遠鏡が持つ 4つの全焦点について、システムが正常に動作していることを確認しました。
(2) 主鏡固定点の恒久対策
主鏡を主鏡セルに固定する 3 カ所の固定点に、仮にある一定以上の力が加わった場合、自動的に主鏡を放す機構 (メカニカルヒューズ) を設けました。その結果、一層安全にアクチュエーターによる主鏡の制御が可能になります。
(3) 高度角のエンコーダー交換
望遠鏡が向いている高度方向の値を測定するエンコーダーを更新しました。これにより、望遠鏡が天体を追尾する精度は 0.1 秒角以下になりました。
観測操作のユーザーインターフェースの改良によって観測効率が一層向上しました。例えば、分光観測の際に天体をスリットの位置に合わせるための時間が格段に減少したことで、天体観測の時間をより長く確保することができます。
(1) IRCS
撮像カメラの赤外線検出器を高感度/低ノイズのタイプに交換しました。その結果、撮像およびグリズム分光の感度が 2 倍に向上していると予想されます。
(2) CIAO
明るい天体を隠す "マスク" と散乱光を抑える "リオストップ" の交換を行いました。これにより、より効率的なコロナグラフ観測が期待できます。
(3) COMICS
検出器を 4 個から 6 個に増やし、また検出器制御システムを更新しました。その結果、一度に分光観測できる波長範囲が 1.7 倍に向上しました。
(4) FOCAS
天体からくる光を電気信号に変換する CCD (電子結合素子) を MIT 製に交換しました。その結果、画像の取得速度が2倍に上がり、観測効率がアップしました。
(5) Suprime-Cam
ハードウェアの一部を交換し、これまでよりも信頼性・操作性の高いものしました。また、システムを観測者がより一層利用しやすいソフトウェアに更新しました。
(6) HDS
イメージローテータ (天体の向きが常に一定になるように、望遠鏡の動きに合わせて視野を回転させる装置) についている鏡の再蒸着作業を行っています。鏡の搭載は12月の予定です。
(7) OHS/CISCO
CISCO ハードウェアの一部を更新したことで、完全リモート制御が可能となりました。これによりヒロにある山麓施設から、リモート観測をするための準備が整いました。
(8) AO
望遠鏡により集められた光が通る「AO 光学系の通路」の大きさを拡大しました。その結果、オートガイダー (星の日周運動に合わせて望遠鏡を駆動するときに使うカメラ) が参照する星を見つけることのできる範囲は広がりました。