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200名の天文学者が集まったヒロでの国際会議

2001年3月30日

 この2ヶ月の間、すばる望遠鏡にとって重要な2つの国際会議が開催されました。"Astrophysical Ages and Time Scales" と "すばる望遠鏡ユーザーズミーティング" です。

すばるユーザーズミーティングの会場となったすばる望遠鏡の山麓施設

 第一回目のすばる望遠鏡ユーザーズミーティングは、3月7日から9日にかけて、ハワイ島ヒロにある国立天文台ハワイ観測所の山麓施設にて行われました。この会議への参加者は、すばる望遠鏡共同利用観測の最初の期間に観測した方々のほか、ハワイ大学の研究者、望遠鏡や観測装置の試験観測期間中に観測を行った人々です。会議の最初の日は、望遠鏡の現在の状態、さらに今期やこれからの共同利用観測に関する議論がありました。続く2、3日目は、すばる望遠鏡の観測による予備的な結果について、22 名の発表者が報告をしました。その後、次期観測装置についての検討や望遠鏡の運用やサポート体制について話し合う場がありました。これらに加え、17のポスターによるプレゼンテーションも行なわれました。

ユーザーズミーティングでのポスター発表

 今回は、日本国内の4つの会場とハワイ観測所を電話回線によるテレビ会議システムで結び、会議の中継が実施されました。このシステムによりライブの映像と音声を日本へ届けることで、日本にいる参加者は会議を見るだけでなく、参加することができます。ほどんどは、ハワイ観測所からの発表の後、日本も交えた質疑応答という形で進みましたが、一つの発表は、実際にテレビ会議システムを用いて日本から行われました。

日本から行なわれる発表を聞くハワイ観測所における参加者

 ユーザーズミーティングの1ヶ月前の2月5日から9日、すばる望遠鏡とジェミニ望遠鏡が主催した国際会議 "Astrophysical Ages and Time Scales" がヒロで行われました (ヒロには現在、Mauna Kea 山頂にある8つの望遠鏡のうち、5つの研究施設があります) 。この会議には、世界18カ国から170名もの天文学者が集まり、私たちが現在理解している「時間」とは何か、その測定や利用の方法について、1週間にわたり議論をしました。

"Astrophysical Ages and Time Scales" 会議にて挨拶をするハワイ州知事

 一般的な研究会では、銀河クラスタの形成といった天文学のごく狭い分野や、広視野画像など特定の技術について話し合うことが普通です。この会議では、天文学の根底にある時間に関して幅広く話し合うことになりました。

 最初のセッションは、時間の本質やその考え方についての講演です。その後は、太陽や太陽系の年齢の測定について、星や銀河の年齢について、銀河や構造形成のモデルについて、ハッブル定数の測定について、宇宙は広がっているという理論を支持する観測的事実についての発表がありました。さらに星にウランが存在していることを発見したことが報告されました。この発見から、化石や遺跡の年齢を放射性炭素年代測定法によって測定するように、星の年齢を検定することができるのです。

 このような研究会の議論は、参加した天文学者の間だけに留まらず、一般の方々ととも共有することが大切です。今回は、開催地周辺に住む人々を対象とした3つの講演会が、会議に参加するためにハワイを訪れた天文学者によって行われました。高等学校12校の理科教師が参加できるように予算が準備され、さらに当日は数名の天文学者が専門用語の解説や、講演の内容を補足する役割を引き受けました。

夕食会での安藤裕康ハワイ観測所長による挨拶

 この会議は、ジェミニ望遠鏡とすばる望遠鏡が主催者となり、カリフォルニア工科大学サブミリ波観測所、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡、ジョイントアストロノミーセンター、ハワイ大学天文学研究所、スミソニアン天文台サブミリ波干渉計の後援により開催されました。また三菱電機アメリカと富士通アメリカから、予算への援助がなされました。

 この会議の開催が大変よく受け取られたこともあり、今後もマウナケア山頂に観測所を持つ天文台がより多くの国際会議をここハワイ島で開催することが期待されています。

 

 

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