観測成果

重力レンズ天体 PG1115+080

1999年


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高解像度 (411 KB)

【観測条件】
天 体 名:重力レンズ天体 PG1115+080 (しし座)
使用望遠鏡:すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置:CISCO (近赤外線カメラ)、Suprime-Cam (可視光広視野カメラ)
フィルター:Rバンド ((赤)、Jバンド(1.25 ミクロン)、K'バンド(2.15 ミクロン)
カラー合成:青(Rバンド)、緑(Jバンド)、赤(K' バンド)の3色合成
観 測 日 時:世界時1999年1月13日(Rバンド)、1月14日(Jバンド)
   1月12日(K'バンド)
露 出 時 間:420 秒(Rバンド)、35 秒(Jバンド)、275秒(K'バンド)
視   野:4.7秒角×5秒角
画像の向き:北が上、東が左

【説 明】
アインシュタインの一般相対性理論によると、重力の作用によって光線も曲げられる。遠方の天体と我々との間に銀河や銀河団があると、その重力によって遠方の天体の光が曲げられて我々に届くという「重力レンズ」の例が多く観測されている。この画像はそのような重力レンズ天体のひとつであり、約100億光年かなたにあるクエーサーが、約30億光年の距離にある銀河のちょうど真後ろに位置している。このように並び方が良いと、中間の銀河の重力 によってその周囲の空間が曲げられているために、それがまるでレンズのように作用して、後方にあるクエーサーからの光線が曲げられて我々に届くことになり、同じクエーサーがいくつにも分裂して見えることになる。左のパネルは可視光と赤外線の画像を合成したもので、レンズとして働いているのが中心にある赤っぽい銀河であり、その周囲に重力レンズ効果で分裂した4個のクエーサー像が見える。すばる望遠鏡の高分解能 (この画像では0.33秒角) によって、4個に分かれたクエーサー像がきれいに分離できている。右のパネルは広がった淡 い光を強調したもので、淡い光はリング状に分布している。並び方によっては、重力レンズ効果によってこのようなリングも観測される。重力レンズによって結像した像の位置や強度 から、宇宙膨張の速度を決めたり、宇宙が今後永久に膨張を続けるのか、あるいは膨張速度が遅くなって収縮に転じるのかどうかを研究することができる。

 

 

 

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