お知らせ
すばる望遠鏡、共同利用観測を再開 (すばる望遠鏡障害発生報告 第三報)
2011年7月24日17時 (ハワイ)、25日12時 (日本) 発表
すばる望遠鏡は7月2日 (ハワイ時間、以下同じ) に起きた冷却液漏れの障害からの復旧を進め、7月22日、障害の直接の影響がなかったナスミス焦点での共同利用観測を再開しました。ナスミス焦点では、高分散分光器 (HDS)、波面補償光学装置 (AO188)、近赤外線分光撮像装置 (IRCS)、高コントラストコロナグラフ撮像装置 (HiCIAO) を用いた観測を行うことができます。
冷却液漏れの影響を受けた主鏡については、洗浄後に反射率の測定を進め、問題のないレベルになっていることが確認されました。また、今回の冷却液漏れが起きたのは、望遠鏡最上部にある主焦点部 (周辺光学系システムと主焦点カメラを含むユニット) であることがわかりました。障害の原因と発生の経緯については引き続き調査中ですが、現在は該当の主焦点部ユニットを望遠鏡から完全に取り外しており、冷却液漏れは再発しない状態になっています。当面の共同利用観測は、冷却液を使わない副鏡を主焦点部にとりつけ、ナスミス焦点の観測装置を用いて行います。
主焦点の観測装置については、原因の解明と対策を行ったうえで観測を再開する予定です。また、冷却液漏れの影響を受けたカセグレン焦点については、復旧次第観測を再開する予定です。
国立天文台
用語解説:ナスミス焦点の観測装置 (下図)
・高分散分光器 (HDS)
可視光を細かく波長に分けて観測する装置で、銀河系初期に生まれた星の組成を調べたり、星の視線速度変化を詳細に測って太陽系外惑星を探査したりするのに用いられています。
・波面補償光学装置 (AO188)
形状を制御できる鏡を用いて大気のゆらぎによる星像の乱れを補正し、天体の微細な構造を見分けることを可能にする装置です。以下の IRCS と HiCIAO とともに用いられます。
・近赤外線分光撮像装置 (IRCS)
波面補償光学装置を生かした高い解像力と感度による撮像観測・分光観測を行う装置で、星・惑星系形成から遠方銀河まで幅広く利用されています。
・高コントラストコロナグラフ撮像装置 (HiCIAO)
明るい天体の光を隠し、そのすぐ近くにある暗い天体や構造を写し出すことができる装置で、太陽系外惑星の直接撮像による探査や、若い星のまわりの円盤構造の研究に用いられています。
図:すばる望遠鏡本体とナスミス焦点の観測装置。共同利用観測を再開したナスミス焦点では、高分散分光器 (HDS)、波面補償光学装置 (AO188)、近赤外線分光撮像装置 (IRCS)、高コントラストコロナグラフ撮像装置 (HiCIAO) を用いた観測を行うことができます。 |