プリンストン大学、国立天文台の研究者からなる研究チームは、2016年7月、すばる望遠鏡に新しい観測装置「カリス」(CHARIS, Coronagraphic High Angular Resolution Imaging Spectrograph 高コントラスト近赤外線面分光装置) を搭載し、その機能確認のための試験観測に成功しました (図1)。カリスは、明るい恒星 (星) の周囲を回る暗い惑星を見分けて分光観測を行うことで惑星表面の状態・温度・大気の様子などを明らかにすることを可能にする、画期的な観測装置です。
系外惑星 (太陽系外の惑星) として確認された天体は、1995年に最初の例が報告されて以来、2017年1月の時点で 3500 個に達しようとしています。これらの惑星はこれまで、惑星に引っ張られることによる中心星の動きの揺らぎや、中心星の前を惑星が通過する際に生じるごくわずかな明るさの変動などを観測することで、間接的に発見されてきました。一方で、恒星に比べると惑星はとても暗いため、その姿を直接写し出すことはきわめて困難です。近年になってようやく、すばる望遠鏡などの大望遠鏡で系外惑星を直接撮影できるようになりました。
すばる望遠鏡は、細かなものを見分ける性能がとても高い上に、地上望遠鏡の宿命である大気の乱れが観測に与える影響をできるだけ抑える工夫をこらしています。カリスではそうした特長やすばる望遠鏡における系外惑星撮影用カメラの開発に関する経験が活かされています (図2)。精細かつ鮮明な画像を提供するすばる望遠鏡の超高コントラスト補償光学システム (SCExAO; Subaru Coronagraphic Extreme Adaptive Optics) はすでに活躍中です。そこに、カリスが詳細な分光観測を提供することで、世界最強のコンビネーションが実現します。
今回の試験観測の成功は、カリスが系外惑星の研究を飛躍的に進めるジャンプ台となり得ること意味します。カリスは、2017年2月から、すばる望遠鏡の共同利用観測装置として使うことができるようになります。つまり優れた観測計画を提案すれば、世界中どこにいる研究者でも、カリスを活用できる道が開かれるのです。さまざまな惑星系の起源や進化の理解につながる豊かな研究分野が開けると期待されます (図3)。