ハワイ文化との共存をめざして
国立天文台とハワイ島

Photo: 地元の方を招いての七夕イベント。
国立天文台とハワイ島
国立天文台は、1999年から観測を開始したすばる望遠鏡の建設を始める頃から30年近くにわたり,ハワイ地域社会とのつながりを大切にしてきました。すばる望遠鏡のスタッフはおよそ半分が現地で雇用された日本人以外のスタッフです。地域社会に受け入れられ、協力していただくことによってはじめて望遠鏡の運用が可能になります。日本から赴任するスタッフもハワイ島の住民として地域社会に溶けこんでいます。また、マウナケアのほかの天文台と協力して、学校での出前授業や、ショッピングモールでの天文学イベント (AstroDay) などを継続して行っています。
ハワイ島での活動

マカリィ・セミナー
すばる望遠鏡では、先住民を含めて地元の方から講師をお招きし、ハワイの歴史や文化を学ぶセミナー「マカリィ・セミナー」を開催してきました。ホクレアの航海士から伝統航海術についてのお話を伺ったりもしました。

ハワイ島での出前授業
先生方のリクエストに応じて、観測所スタッフが教室で出前授業を行っています。マウナケア山頂の天文台群所属のスタッフが1週間で多数の学校訪問をこなすジャーニー・スルー・ザ・ユニバースという行事には、毎年ハワイ観測所から多くの研究者が参加しています。

ハワイの住民のための望遠鏡見学ツアー
すばる望遠鏡は、マウナケア天文台群が合同で行う地元住民向けの望遠鏡見学プログラム「カマアイナ・オブザバトリー・エクスペリエンス」に参加しているほか、地元学生向けのすばる望遠鏡見学ツアーも積極的に実施しています。

メリー・モナーク
ハワイ島で毎年開催されるフラの祭典「メリー・モナーク」のパレードに、マウナケア天文台群の職員も参加しています。
ハワイ文化の尊重

photo: マウナケアの夜明け。
マウナケアの天文台群は、ハワイの文化や信仰などの精神的な営みを尊重し、望遠鏡の運用や科学成果がハワイの地域社会や文化と融合するように取り組んでいます。
マウナケアのよりよい理解のために
マウナケア天文台群の職員は、文化・天然資源研修を毎年受講しています。ハワイの文化的な活動に関する理解を深め、望遠鏡が文化・天然資源へ与える影響について常に配慮するよう学んでいます。
地域社会・文化との融合をめざして
マウナケア天文台群はイミロア天文学センターと協力して、ハワイ文化と天文学の相互理解を進めるための教育・普及活動を行なっています。マウナケアの天文台で発見された天体にハワイ語の名前をつけるプログラムもそのひとつです。
最先端の天文学をになうマウナケア

photo: 朝陽を受けるすばる望遠鏡と空に映るマウナケアの影。
最先端の天文学をになうマウナケア
マウナケアは望遠鏡建設地として他に類を見ない最適な場所です。標高4000メートルの山頂域では、気候は安定し、乾燥しているため観測を妨げる水蒸気の量が低いのが特徴です。特筆すべきは上空の大気が極めて安定していることで、地球の大気に乱されることなく天体の姿を捉えることができます。他の望遠鏡設置地で「最も観測に適した日」とされる夜は、マウナケアでは日常的にみられます。そして、マウナケアで「最も観測に適した日」の観測条件は、世界の他のどこの場所でも得られません。このように、マウナケアは天文学にとって特別な場所です。私たちは、ハワイの文化と信仰においてマウナケアが大切な場所であることを理解し、最大限の配慮をおこなった上で、ハワイの人々に認めていただき、文化的活動と共存しながら天文学研究を行わせていただくことを望んでいます。