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ハワイ観測所スタッフ、石英質の塵粒が輝く恒星を発見 ー 惑星形成の途上にある恒星か

2012年4月30日

  国立天文台ハワイ観測所の研究者を中心とする研究チームは、日本の赤外線天文衛星「あかり」と米国の赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」の観測から、石英質の塵が周囲に豊富に存在する恒星を発見しました。この塵は、恒星の周囲で惑星が形成される過程で、惑星の材料となる「微惑星」が非常に活発に衝突することで放出された可能性があり、今後、太陽系外惑星の形成過程やその材料物質についてのさらなる解明の手がかりになると期待されます。


  1995年にペガスス座 51 番星という恒星に惑星が発見されて以来、すでにおよそ 700 もの太陽系外惑星の存在が確認されています。このような太陽系外惑星がどのように生まれるのか、また、私たちが住む太陽系がどのような生い立ちを経てきたのかを探ることは、天文学の根本を担う重要な研究テーマの一つです。現在広く受け入れられている惑星系形成のシナリオでは、若い恒星の周囲にできるガスと塵の円盤 (原始惑星系円盤) の中で、もともと星間空間に存在していた小さな塵が集まって微惑星に成長し、さらにその微惑星同士が衝突・合体することで、地球のような岩石質惑星が作られると考えられています。

  今回、国立天文台ハワイ観測所・広報担当サイエンティストの藤原英明さん、東京大学大学院理学系研究科・教授の尾中敬さん、名古屋大学理学研究科・研究員の石原大助さんを中心とする研究チームは、惑星形成過程の後期に微惑星同士が衝突する際、主系列星 (太陽のように成熟した恒星) の周囲で破片の塵が放出される可能性があることに注目しました。破片の塵は、恒星からの光を吸収して温まることにより赤外線を放射します。そこで研究チームは、2006年から2007年にかけて日本の赤外線天文衛星「あかり」が観測・作成した赤外線の全天地図の中から、赤外線で特に明るく光る主系列星を探す試みを進めてきました。

  探査の結果、 太陽に似た質量を持つ HD 15407A と呼ばれる恒星 (ペルセウス座の方向、地球からの距離およそ 180 光年) が非常に強い赤外線を発していることが分かりました (図1)。この恒星が主系列星であることから、微惑星が非常に活発に衝突することで恒星の周囲に大量の塵がまき散らされ、その塵が赤外線を発していると考えられます。


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写真1: (左)「あかり」により観測された HD 15407A の赤外線画像 (視野 0.15 度× 0.15 度)。(右)「スピッツァー」で得られた HD 15407A の赤外線スペクトル。波長9マイクロメートルと 21 マイクロメートル付近に見られる盛り上がりが、石英質の小さな塵粒がこの星の周囲に存在することを示しています。(クレジット:東京大学/国立天文台、クレジットを明記していただければ報道・研究教育・科学普及・個人での利用においては自由にご利用いただけます。)


  さらに研究チームは、HD 15407A について米国の赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」を用いた追加観測を行いました。「スピッツァー」の観測から得られる赤外線スペクトル (波長ごとの光の強さの分布) からは、塵の量や鉱物学的特性を探ることが可能です。HD 15407A のスペクトルの形 (凹凸の様子) を精査したところ、この恒星の周囲には大きさが1マイクロメートル程度の石英質の塵が、少なく見積もっても 100 兆トンは存在することが分かりました (図2)。さらに、これらの塵は中心の恒星からおよそ1天文単位 (1天文単位は太陽と地球との平均距離でおよそ1億 5000 万キロメートル) の位置、いわゆる地球型惑星の形成領域に付近に分布していることも、赤外線スペクトルから分かりました。太陽に似た質量を持つ主系列星の周囲に石英質の塵が見つかり、その量や分布が正確に決まったのは、初めてのことです。


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写真2: HD 15407A を取り巻く塵の想像図。石英質を豊富に含む塵が、中心の恒星から1天文単位程度離れた場所に存在していると考えられます。(クレジット:東京大学/国立天文台、クレジットを明記していただければ報道・研究教育・科学普及・個人での利用においては自由にご利用いただけます。)


  宇宙空間で一般的に見られる塵はケイ酸塩という鉱物であり、石英質の塵はこれまでほとんど見つかっていません。HD 15407A に見られる石英質の塵がどこでどのように作られたのかは、現時点でははっきりとは分かっていません。一方で、地球上には石英に類似した組成の岩石が豊富に存在することが知られています。このことから、地球に類似した表面組成を持つ大きな微惑星がこの恒星の周囲に存在し、この微惑星にさらに別の天体が衝突することによって、石英質の塵が大量に放出されたという可能性も考えられます。本研究を主導した藤原さんは、「日米が誇る2機の赤外線天文衛星から得られる情報を組み合わせることで、惑星材料物質の解明の手がかりとなる天体を見つけることが出来ました。今後は、理論研究や鉱物の測定、他の波長での観測などから得られる情報を組み合わせることで、この貴重な天体の素性を多角的に解明し、惑星形成過程の理解につなげたい」と意気込みを語っています。

  この研究成果は、2012年4月20日に発行された米国の天文学誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に掲載されました。また、この研究成果は、科学研究費補助金・新学術領域研究 (23103002) によるサポートを受けています。


研究論文の出典: Fujiwara et al. 2012, "Silica-Rich Bright Debris Disk around HD 15407A", The Astrophysical Journal Letters, 749, L29 (2012).





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