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毎年恒例となったアストロ・デー ~ショッピングモールから宇宙へ~

2008年7月3日

 

マウナケア天文台群の合同公開日のようなアストロ・デー。天文台で働く研究者や技術者に限らず、アマチュア天文家、学校の先生や生徒達、更にはハワイ文化の担い手達がヒロ市内のショッピングモールに集まり、展示やデモ、演奏などを行います。2002 年から始まり7年目を迎えた今年は 50 件を超える出展があり、家族全員で楽しめる一大イベントとなりました。2008 年 5 月 3 日当日、12,000 人以上がこの日、モールに足を運んだと推定されています。

 アストロ・デーはショッピングモール内で行われるため、買い物客も気軽に参加できるし、雨の多いヒロでも天気を気にせず楽しめます。マウナケア天文台群、地元学校の生徒による理科の自由研究、学校のロボットクラブ、アマチュア天文家、ハワイ文化の展示やデモが所せましと並べられ、参加者を魅了しました。学校のウクレレバンドや歌、地元の音楽家たちによるギターの生演奏も目玉の1つです。スター・ラボ(出前プラネタリウム)や液体窒素で冷却されたカメラによる赤外線での写真撮影もすっかり定番となりました。各学校で盛んに行われているロボットクラブが集まり、小学生から高校生までそれぞれが自作のロボットを披露しました。その中の1つ、ヒロ高校のクラブは、ハワイ観測所の実験室や機械工作室を見学し、すばるの技術者たちと話をしたことがあります。また、毎年アストロ・デーにあわせて、夜はマウナケア山中腹のオニヅカ・ビジター・センターで観望会も行われています。

 ハワイ観測所はアストロ・デーにて、毎年すばる望遠鏡の展示だけでなく、キッズ・コーナーという一大コーナーを担い、様々な子供向けのアクティビティを提供してきました。今年は教育的で楽しめるキッズ・コーナーと、すばる望遠鏡の展示を融合させました。入り口に置かれたマウナケア山頂の縮尺模型に誘われて、すばるコーナーに入ってきた人々は、身近な素材で作ったデモを見ながら、すばる望遠鏡の最新の装置について理解を深めました。



分光カードとファイバー多天体分光器 FMOS(エフモス)
  「分光フィルム」(回折格子フィルム)をつけたカードで様々な光源のスペクトルの違いを理解した人々は、ファイバーのインテリアで作ったデモを見ながら、2008 年1月にファーストライトを迎えたばかりの FMOS の原理を理解しました。「最新装置の FMOS は一度に 400 天体も分光できるのですよ」という説明を聞いた人々はみんな「すごーい!」と歓声をあげていました。



HiCIAO(ハイチャオ):コロナグラフと補償光学
 FMOS と並んですばるの展示のハイライトとなったのが、2007 年 12 月にファーストライトを迎えた HiCIAO の説明です。HiCIAO は現在稼働中のコロナグラフ撮像装置 CIAOよりもっと高いコントラストを実現し、明るい中心天体の近くの暗い天体の観測を可能にした装置です。明るい電球の背後に書かれた文字は読みにくいけれど、手で光を遮るとはっきり読めることを経験した人々は、コロナグラフの有効性を実感しました。また、大気揺らぎに見立てた水を通して光源を見た人々は、なぜ星がまたたくのか、なぜ補償光学の必要なのか理解しました。


4D2U
  国立天文台 4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U プロジェクト)が作成した、4次元デジタル宇宙ビューワー “Mitaka”(ミタカ)では、パソコン上で宇宙のバーチャルツアーが楽しめます。みんなそれぞれ自分のお気に入りの惑星に近づいたり、惑星からの夜の風景を楽しんだりしました。太陽系内天体や近傍銀河の3次元旅行を体験した、ワイアケア小学校の3年生は、「土星の輪をくぐったのが面白かった」「1994 年、シューメーカー・レビー彗星が木星に突入する様子がかっこいい」と満足気でした。また、地球からみた星座と他の惑星から見た星座が同じことに気付いた人々はみんな驚きをかくせずにいました。この事実、ご存知でした?


すばるくんハットと「修了証書」
  今年のキッズ向けの目玉は、例年の塗り絵とクイズに加えて、「すばるくんハット」作りです。子供達はすばる望遠鏡のウエブサイトでも人気の「すばるキッズ」のキャラクターに色をぬり、帽子にしました。すばるコーナーで楽しんだ子供達は、すばるくんハットをかぶって、自分の名前の入った「修了証書」を持って、カメラの前でにっこり。すばるコーナーの「修了証書」とポラロイド写真も毎年恒例となりました。



 すばるコーナーには 500人以上が立ち寄り、楽しみながらすばる望遠鏡と最新の装置について理解できて満足していただけたようです。今やすばるコーナーは、アストロ・デーを代表する人気コーナーの1つとなりました。ハワイ島内からだけでなく、すばるコーナーを訪れた日本人観光客もいました。

 アストロ・デーの目的のひとつは、子供達が天文学に限らず広く科学に興味を持ち、専門性の高い進路を考えるきっかけを提供することです。大きな目的に向かってアストロ・デーは年々進化を続け、主催者、出展者、参加者、それぞれみんなが満足できるイベントに成長しました。ヒロ市内での認知度も高まってきていると確信しています。ハワイ観測所のスタッフも、すばるコーナーでの説明を大いに楽しみ、来年はどんな展示を行おうかと今からわくわくしています。

 アストロ・デーは、毎年5月の第一土曜日に開催されます。5月にハワイ島に来られる機会がありましたら、アストロ・デーに参加されてはいかがでしょうか。詳細はアストロ・デーのホームページ(英語)をご覧下さい。



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