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主鏡のアルミニウム蒸着作業

2006年12月31日

 今年の夏、マウナケア山頂にあるすばる望遠鏡の大掛かりな手入れ作業が 3 年ぶりに行われました。天候が悪いときを除き、お盆でも正月でも観測を行っています。一方、日中の作業は望遠鏡や装置の調整です。月に 2 回は主鏡のクリーニングを実施しているものの、鏡の表面には少しずつ汚れがたまっていきます。このため 2003 年の 8 月から続けていた観測を今年の夏は中断して、主鏡のアルミニウム蒸着や望遠鏡の大掛かりな手入れを行いました。

 主鏡のアルミニウム蒸着とは、主鏡ガラス材の上にメッキされているアルミニウムの反射膜を一度はがして、ガラスの表面をきれいに洗い上げ、新しいアルミニウムの反射膜を再メッキする作業です。望遠鏡の手入れの中には大きなモーターをはずして、3 日がかりで軸の調節を行い、潤滑油を塗り直して戻すような仕事もありました。このような作業は、毎晩観測を続けている普段のスケジュールの中ではできないことです。全工程の約 3 週間は望遠鏡にとっての夏休みでしたが、メンテナンスを行ったスタッフにとっては逆に大忙しの時期となりました。

 主鏡アルミニウム蒸着は 1998 年度の入荷時に行った第一回から今回で 5回目となりました。作業手中の詳細は 2001 年の作業記録をご覧ください。手順や要領を熟知したこともあり、従来より一週間も作業時間を短縮することができました。主鏡を主鏡セルに乗せる工程は相変わらず難しい作業ですが、十分に確認しながら丁寧に進めました。洗浄方法も工夫を重ねてきたおかげで、洗い上がりもこれまで以上によくなっています。ガラスの上面を一様に手早く乾燥させることはまだ難しい課題です。

 

前回の主鏡のアルミニウム蒸着作業に比べて改良した内容:

  1. アルミを溶かしつける工程では、アルミニウムクリップの改良により、効率が格段に向上しました。
  2. いくつかの大掛かりな作業を平行して進めることができました。これは作業員の経験と技術の向上が大きく寄与しています。
  3. より安全な方法と緊密な連絡、スタッフの間で声を掛け合う様子が、山頂作業の熟練度を表しています。

 メッキ後も、続いている作業があります。望遠鏡の一層の性能向上のため、新型の波面補償光学装置が導入されました。中でもレーザーガイド星のための装置の運搬、備え付け、調整は大掛かりな作業といえます。また望遠鏡の上に取り付ける新しい観測装置のために、望遠鏡のトラス (骨組み) に沿って光ファイバーケーブルを敷設しました。すばる望遠鏡は、常に進化を続けているのです。



アルミニウム蒸着作業にもちいるフィラメントの詳細

 

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