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すばる望遠鏡を支えるスタッフ(9)

2005年1月26日

今回から3回に渡って、サポートサイエンティスト(サポートアストロノマー)の皆さんを紹介します。 (情報は掲載当時のものです)

 

HDSサポートサイエンティスト
田実晃人

― 自己紹介をお願いします

 高分散分光器 HDS サポートサイエンティスト、田実晃人です。静岡県静岡市出身。趣味は絵画と、コンピュータを使ったプログラミングやゲーム作りです。

― バックグラウンドを教えてください

 高校までを静岡で過ごし、仙台にある東北大学で博士課程を終えました。卒業後、東大の木曽観測所と国立天文台岡山観測所を経てすばる望遠鏡に来ました。ここに来たきっかけは岡山にあるHIDESという装置で高分散分光の研究をしていた関係で、同分野のHDSの試験観測に携わることになったことです。

― なぜ天文学を?

 幼いころに買ってもらった望遠鏡でよく星を見ていました。直接的なきっかけは、サイエンスをやりたいと思って天文学もある東北大に入ったことですね。そこで天文学教室に入ってみたらなかなか面白かったのでそのまま天文学を勉強することにしたんです。

― 仕事の内容は?

 HDSのサポートサイエンティストとして、すばる望遠鏡やHDSについて詳しくない観測者でも観測が出来るように準備段階からお付き合いして、山頂やリモート観測室で装置の状態を確認しながらスムーズな観測が出来るようにお手伝いします。日頃から装置が順調に動くように三鷹のグループやハワイ観測所の装置グループなどと協力してメンテナンスをしたり、使いやすくなるようにグレードアップを図ったりしています。HDSは安定しているので扱いやすい装置ですね。

― 仕事上で気をつけていることはありますか?

 観測が成功することが一番大切なことなので、事前に観測者とよく話したり手順について確認したりして順調に進む環境づくりをしています。観測前日にお話することもありますが普段はメールなどで小まめに連絡を取り合うように心がけています。

― 天文の研究分野は?

 惑星状星雲を専門にしています。HDSを使ってやっていることはどうやってガスが形成されるのかとか、ガスの運動や成分や温度などの物理状態を研究しています。今までは銀河系のハローには軽い惑星状星雲、つまり古い星しかないと思われていましたが最近そこに重い星を示すような特徴が見つかったのは面白いと思いますね。これまでの研究とは異なる発見をしたことは大変興味深いですね。

― 休日の過ごし方は?

 ほぼ毎週仲間とテニスをしています。あとは、家にいることが多いですね。

― 同様の分野を目指す若者になにかアドバイスをお願いします

 一番に言えるのは、「好きこそ物の上手なれ」ということですね。観測所に関わる人間としてはただ天文学で秀でたものを持っていたり天文学に対する強い興味を持っていたりするだけではなく、プラス一芸があると重宝されます。例えば、機械を触ったりソフトウェアを書いたりできるといいと思いますよ。


HDSの詳細ページ

 


 

COMICSサポートサイエンティスト
藤吉拓哉

― 簡単な自己紹介をお願いします

 冷却中間赤外線分光撮像装置 COMICS サポートサイエンティスト、藤吉拓哉です。東京都出身。趣味はカメラ、サッカー、スポーツ観戦です。

― 経歴を教えてください

 日本の高校を卒業した後、オーストラリアに渡って大学と大学院を終了しました。大学院での研究は、大質量星形成(Massive Star Formation)について中間赤外線を中心に研究していました。それからイギリスでミリ波での低質量星形成の研究をしていました。その後、すばる望遠鏡のサポートサイエンティストになりました。

― 天文学を志したきっかけや動機はなんですか?

 小学生の時の宿題で天文観測というのがあって、星を一つ決めてその星が動く様子を10分ごとに観察するという課題だったんです。ところが、自分が観察していた星が数時間経っても動かなかったんですね。後でそれが北極星だったということが分かったんですが、「なんで?」という疑問を持ったのが最初のきっかけだと思います。その後は夏休みの課題で望遠鏡を作ったりもしました。実は、ほとんど親が作ったんですけどね。具体的に理系の道に進もうと思ったのは高校3年生で進路を決めた時です。

― COMICSのサポートサイエンティストになったきっかけは?

 大学院の研究室がその当時は世界で唯一の撮像ができる中間赤外線の偏光器を持っていたため、その装置を使って観測と研究をしていました。この時の経験もあって、また中間赤外線での研究を続けたいということもありCOMICSのサポートサイエンティストになりました。グループに活気があり、また装置の向上を考えたりしているのでやりがいがありますね。

― COMICSの装置としての特徴は?

 すばる望遠鏡でこの波長を観測するのはCOMICSだけですし、口径8から10メートル級の大型望遠鏡用でCOMICSと同じような検出器がついた中間赤外線の観測装置で現在動いているものは数少ないです。中間赤外線を使った研究は比較的新しい分野で、最近では太陽系だけでなく近傍銀河の研究にも使われています。例えば生まれたばかりの星の周りにある、室温程度の塵なども重要なターゲットです。分光観測することで、それらがどういう状態になっているかがわかり、星形成の謎を解くうえでの貴重な手掛かりとなります。

― 休日はどのように過ごしていますか?

 リラックスしています。最近、カメラを持って動物園に行って散歩をしました。ヒロの動物園にも意外といろいろな種類の動物がいるのでいいですよ。

― 天文学やすばるに興味のある人たちにアドバイスをください。

 赤点取ったくらいでは諦めずにいつも頭の片隅に「これやりたいな」と思いながら努力していれば何とかなるという証明が私だから、夢を諦めずに努力してください。犬も歩かなきゃ棒に当たらない。何年か前に目にしたアメリカのアイスホッケーの選手が印象的な言葉を口にしていました。「統計で言うと打たなかったシュートは100%入らない」まったくその通りだと思いますね。

参考:
大質量星とはオリオン星団のように沢山の星が集まっている。
低質量星は太陽のようにひとつだけぽつんとある。


COMICSの詳細ページ

 

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