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マウナケア山にある天文台

2001年6月22日

 パート II - サブミリ波望遠鏡と電波望遠鏡

 先月は、マウナケア山にある光学赤外線望遠鏡をご紹介しました。そこで今月は、サブミリ波望遠鏡と電波望遠鏡について見ていきましょう。

 マウナケアの山頂は、天体観測を行う場所として、世界中でもっとも適した場所とされています。年間約 220 夜が晴れること、シャープな画像が得られる安定し乾燥した大気、夜空を明るくする大きな都市が近くにないことで、数多くのさまざまな望遠鏡の設置場所として選ばれてきました。

 光学赤外線望遠鏡がある山頂の尾根の下は「ミリメートル・バレー」と呼ばれています。そこには、(可視光よりも約 2000 倍長い) 波長約 1mm の電波 (サブミリ波) を観測している 3 台の望遠鏡があります。サブミリ波は、絶対零度 (-273 度C) よりも数十度ほど高い温度の物質から放出されるものです。

 ジェームス・クラーク・マックスウェル望遠鏡 (JCMT) は、サブミリ波を観測する稼動中の望遠鏡の中では最大の口径 15m アンテナを有します。そのアンテナは、形状を精度高く維持するため、276 枚のアルミニウムパネルを精密に合わせたものです。また観測中に風やホコリから守るため、ゴアテックス製の大きなスクリーン (サブミリ波はほとんど透過) をアンテナの前に張ります。このため、アンテナにほとんど影響を与えずに、太陽の方向もしくは非常に近いところへ望遠鏡を向けることができます。JCMT は、先月ご紹介した UKIRT に加え、ジョイント・アストロノミー・センターによって運用されています。

 カルテック・サブミリ波天文台 (CSO) は、口径 10.4m のアンテナを有し、アメリカ国立科学財団の管轄のもと、カリフォルニア工科大学によって運用されています。CSO は、JCMT が完成した一年後の 1988 年より観測を開始しました。最近になり、これら 2 台の望遠鏡を干渉計としてリンクさせることを行っています。干渉計の技術は、波長の長い電波ほど簡単なことから、電波天文学の分野では長年使われてきました。最近は、波長の短いミリ波や可視光でも、現実的なものになっています。干渉計として望遠鏡をリンクさせることで、2 台の望遠鏡間の距離と同じ大きさの一つの鏡やアンテナを持った望遠鏡として利用することができるのです。集められたすべての信号はそれぞれの鏡やアンテナから届いたものにすぎませんが、分解能は格段に高くなります。単一の望遠鏡では、主鏡の口径に反比例する、回折限界よりも分解能のよい画像を得ることはできません (例えば、口径 8m の望遠鏡は、口径 4m 望遠鏡の 2 倍シャープな画像が得られます)。しかし干渉計による画像の分解能は、それぞれの望遠鏡を置く間の距離によって決まります。つまり CSO と JCMT の距離は 158m ありますので、これらが干渉計として利用すれば、JCMT 一台よりも 10 倍も高い分解能が得られるわけです。

 JCMT の横、すばる望遠鏡の下に位置する、建設中のサブミリ波アレイ (SMA) は、スミソニアン天体物理天文台と台湾中央研究院の天文天体物理研究所との共同研究プロジェクトです。完成すれば、8 台の 6m アンテナを干渉計として機能させ、一台のときよりも 100 倍も高い分解能を実現します。さらに、JCMT や CSO と同時にまたはそれぞれとリンクさせ、より巨大な干渉計にする計画もあります (SMA と JCMT の間にある建物は、それぞれのアンテナを組み立てて調整するところです)。

 マウナケアにある望遠鏡の最後は、山頂から少し下がったところに設置された、アメリカ国立電波天文台 (NRAO) が運用する超長基線干渉計 (VLBA) の望遠鏡です。VLBA は 1986 年から 1993 年にかけて建設され、ハワイから 8600km 離れたアメリカ領バージン諸島に1台、アメリカ本土に8台の合計 10 台の口径 25m アンテナからなります。これらの望遠鏡を干渉計として用いることにより、その分解能は 0.001 秒角にも達します。これは、例えば月に立つ人間を認識することや、ロサンジェルスからニューヨークに置いた新聞を読むことに匹敵するほどです。

 それぞれを個々に利用したり干渉計として使用するマウナケアの望遠鏡は、夜空に潜む複雑さや美しさを理解するための世界で最も強力な装置なのです。

 

 

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