------------------------------------------------------------------------ 第7回すばる小委員会議事録 ===================================================================== 日時:2005.8.30(火)11時〜17時 場所:国立天文台解析研究棟2階TV会議室 参加者:有本信雄、片坐宏一、高田唯史、土居守(以上三鷹)、臼田知史(ハワイ)。     太田耕司、千葉柾司(以上三鷹)、山田亨(ハワイ)の3委員は午前中は     TAC会議に出席し、午後合流。 TAC委員:MOIRCS審査のために午後出席      佐々木晶、茂山俊和、中島紀、吉井譲(三鷹)、林正彦(ハワイ) 欠席者:岩室史英、小林尚人 書記:吉田千枝 ====================================================================== =議題= 8/23-25のすばる小委員会シンポジウムのまとめと、拡大MOIRCSチームによる 観測提案の審査 =拡大MOIRCSチームによる50夜の観測提案に関する答申= シンポジウムでのユーザーの反応を見ても、GOODS-Nの撮像の必要性については 異論のないところだったが、もう1つの観測領域SSA22や分光観測については 説得力が弱いという印象をぬぐえない。 また、拡大MOIRCSチーム編成の努力についても、まだ日本のすばるコミュニティ全体を 巻き込んだ計画とは言えないようである。 従って、GOODS-N 撮像については、GT20夜プラスアルファとし、 天候等を考慮して計画の完遂まで10夜程度のバッファ夜を認める。 残りのSSA22観測とGOODS-N 分光観測はインテンシブ・プロポーザルの形で、 一般公募に提案することを推奨する。 確認事項: SAC+TACの結論は上記の通りだが、MOIRCSチームがこれを受け入れるか、 あるいはGT20夜を、分光も含めて自由に運用するかは、 MOIRCSチームの判断に任される。 =議論の経過= ++++++午前(すばる小委員会メンバーのみ)+++++++++++++++++ ■シンポジウムのまとめ: 参加者は160名で、これは定例のユーザーズミーティングとほぼ同程度 である。天文台関係者が多かったが、主要大学からの参加も多数あった。 ユーザーからの発言は、定例のUMと比べて活発だった。 WFMOSについても、いずれ当委員会なりの見解を出す必要があるだろう。 現状では、Geminiでの議論だけが先行しており、我々のメリットが感じられない。 ユーザーの反応も消極的だった。 すばるは人も予算も縮小される流れにあり、成果が上がるかどうかが曖昧なものには 投資しにくい状況だが、やるべきことは沢山あり、それらをきちんとやらなければ ならない時期にきている。 30M鏡時代に8M鏡をどう使っていくか、南天へのアクセス(望遠鏡時間の交換)など、 今後検討していく必要がある。 ■MOIRCS 50夜の観測提案について: 20夜は問題ないとして、残り30夜をいきなり承認するのではなく、 まず10夜を戦略枠のような形で認め、その後はさらに中間レヴューをして 判断する、という形が妥当ではないか? シンポジウムでの発表は装置の説明に時間を取られて、サイエンスの話、 特に分光の話が十分でなかった。 これまでの当委員会での議論でも出たことだが、SSA22や分光観測については、 まだ十分ユーザーの賛同が得られていないようである。 むしろ、ユーザー間の競争を確保すべきだという意見もあった。 競争を確保するためにはインテンシブに応募してもらうのがよいが、S06A期は MOIRCSをインテンシブに公開していないので、装置チームも応募できない状況である。 拡大MOIRCSチームについて、積極的に計画の趣旨の理解を求め、 研究協力者を募る努力が足りないという印象だ。 まだオールジャパンという体制にはなっていないようだ。 日本の天文学コミュニティ全体を巻き込んだ計画にするためには、 観測所が募集するのも一法である。 だが、装置チームのPIが中心になって声をかけ、PIがコントロールできる 拡大チームを作るのが最善のやり方ではあるまいか。 S-Cam立ち上げの時期に、もっと投資しておけばよかったという反省があるので、 今回は戦略的に運用したい。 -->CISCOがよい成果を出せたのは、UHが早い段階で使ったためで、逆に   装置を売り込むという発想もあっていい。今はUHに使われないうちに、、   という議論になっているが。 学生のD論さえ確保できれば、あとはUHを含めて誰が成果を出していいわけで、 とにかく成果を出すことが大事なのではないか。 ++++午後(すばる小委員会+プログラム小委員会メンバー)の議論+++++ 議論に先立ち、有本委員長からプログラム小委員会メンバーへ経過説明が あった。 引き続いて、MOIRCSの観測夜数は共同利用夜数から削ることになるが、 全て銀河分野から削るわけではなく、他の分野にも若干影響があること。 インテンシブは最大20夜だが、インテンシブを採択したカテゴリからは一律に 5夜を削って、残りを各カテゴリに採択率が平均になるように配当していること。 今回MOIRCS拡大チームがインテンシブ以上の観測夜を要求するからには、 インテンシブ以上の厳密な審査が必要であること、などについて確認した。 ■拡大MOIRCSチームPI(市川氏)によるプレゼンテーション(35分) 資料参照 ■拡大MOIRCSチームとの質疑 Q:優先的にやるのは何か? A:まず撮像をやる。 Q:どこまで深くやるのか? A:データを取りながら、その場で判断していく。  ISSACをしのぐ深い撮像をしたい。 Q:領域は2つないとどうしてもだめなのか? A:2領域は季節が違う。銀河団のあるところとないところである。 Q:GOODS-Nについては先行してやる理由が理解できるが、SSA22については  わからない。一般のプロポーザルで申請してもよいのでは? A:共同利用に提案して競争するように、と常々言われてきたが、  新しいプロジェクトのありようを提案したい。秋の領域はあまり  混んでいないので、合わせて提案した。 Q:拡大チームに、一部を除いてブレーン的な人材がやや不足している印象があるが、  チーム以外の人が募集をかけるのはだめか? A:それでは何のためにやってきたのかわからない。 C:オリジナルなアイディアを持っている人がいた場合を考えると、  やはり公募に出したほうがよい。 Q:論文はどれくらいで出るのか? A:SSA22は春までに2編。GOODS-Nは観測終了後2-3週間でカタログが  できるはずだ。 Q:よく役割分担されている計画だが、MOIRCSコアチームは全てについて  サポートするのか? A:勿論協力はするが、解析はそれぞれのグループのPIがやる。 Q:観測後にすぐ解析できる準備ができているのか? A:できている。 C:理論家の人がチーム内にいてもいいと思う。 C:提案書に記載されているサイエンスのうち、明るい銀河の撮像に関する  ものは、4Mクラスの望遠鏡でも可能と思われる。  また、細かくテーマを分けて、院生のD論にしようとしているようだが、  1つの論文でおさまる内容ではないだろうか? C:20夜プラスアルファぐらいで後は共同利用に出してはどうか? C:GT20夜だけであれば、装置チームがどう使おうと自由だ。  それにプラスアルファの時間を確保するための議論をしている。 C:春はよく曇る傾向にあるらしい。ここまではやる、というように、  キュー的に決めてはどうか? C:アウトプットがちゃんと出るようにしなければならない。 C:半分の確率で曇るといっても、30夜に対して15夜のバッファは現実的でない。 C:共同利用でのバッファ夜は、同じ装置、同じ季節で5夜程度である。 ■SAC+TAC の議論 確認事項:サイエンスは十分にやる価値がある。      国際的にもz=1.5-2.5は激戦区で、そこに日本の成果を集中的に      出すことに意義がある。 C:2つの領域を拡大MOIRCSチームが占有することについての議論から始めたい。 C:SSA22は一般枠で十分だろう。 -->だが秋の領域なので、公募だと来年になってしまう。 -->比較するためなら、来年でもいいのでは? -->性能試験観測という意味合いもあり、それが今秋すっぽり抜けてしまうのは   よくない。 -->今秋のSSA22撮像2夜はやっていいのではないか?所長時間ではどうだろうか? C:インテンシブ枠ではなぜだめなのか理解できない。 -->50夜の申請だから、従来のインテンシブ枠ではカバーできない。   そのため優先枠のようなものを議論している。 -->インテンシブ以外の枠というのは、つまり大プロジェクト的な性格を   持たせようとしているためだ。 -->日本全体がうるおうように、という考え方だ。 C:名前がインテンシブであれ戦略枠であれ、観測時間は共同利用枠を使うしかない。   サイエンスが入らない部分はGTでやるのは気の毒で、それは観測所時間で   やればよいと思う。 C:20夜プラス10夜という方向に行きつつあるようだが? Q:分光をやる前に中間レヴューをやることになるか?撮像についてもやるか?  来年もSACは存続するだろうが、今年と委員会の性格は異なってくるだろう。  従って、誰がレヴューをやるかという問題が残る。 Q:インテンシブにもバッファはあったのか? A:あって、それが有効だった人もいる。以前はバッファはなかった。  十分な観測ができずに再申請した人もいる。 -->プロポーザルには前回の観測達成率を書く欄があり、TACはそこは  よく見ている。 C:最初のリスクシェアのセメスタ(S06A)はSACで特別枠を設け、  以後はインテンシブに出してもらうということでどうだろうか? -->インテンシブにも二つの性格が出てくることになるようだ。   これまで通りのものと、長期プロジェクトの2種という感じになる。 C:将来を考えると、装置を作った人たちが無条件でGT20夜を使うのでは  なくて、サイエンスの提案をしてもらった上で競争を経てやるべきだろう。 Q:第2期観測装置に天域の保障がないというのは、いつ決まったことなのか? A:所長の意思。共同利用採択課題はウェブで公開されているので、  自然に同じ課題は提案されない形になっている。 Q:GOODS-Nの提案が共同利用に出されたらどうするのか? A:これ以上の提案はちょっと出ないだろう。 C:GOODS-N 撮像はいいとして、分光はインテンシブに応募してもらう形  になるだろうか? -->そうすると拡大MOIRCSチームという考えはなくなる。装置開発チームが   20夜を好きに使って後は競争的にということになり、ゼロ査定という   結果だ。 -->ゼロ査定ではだめだろう。 -->バッファをつけて撮像最大30夜ではどうだろうか? -->バッファで余った分は分光に回してもよいのか? -->30夜というのはいつまでにか? -->提案どおり、GOODS-Nの70%の撮像を達成できるまで観測時間を保証する   というのはどうだろうか? -->つまりGTプラス優先枠ということになる。   分光についてはインテンシブ枠に応募してもらうことにし、  インテンシブ枠を拡大することをSACから観測所に推奨してはどうか。 -->SSA22については? -->今年の秋の分は性能試験観測として認められると思う。 -->GOODS-N分光は2件のインテンシブに応募するとして、それが採択されると、  SSA22は提案が通りにくくなることはないだろうか? GOODS-N 撮像について 20夜プラス10夜程度のバッファを認め、計画の完遂を推奨する。 C:現実問題として、S06A期に30夜のアサインは無理。 -->では翌年にバッファ分を実施することになるだろう。 Q:本当に撮像だけでいいのか? A:インテンシブにも出すわけだからいいだろう。 Q:2006年度のSSA22の分光はどうするのか?これも性能試験観測として  認めるのか? A:ETでもGTでもないもうひとつのカテゴリを作るのはよくない。  SSA22撮像はDDTでやり、06年のSSA22分光は所員時間を使うという  ことも考えられる。 バッファについて 2年目に実施する最大10夜程度のバッファは、飽くまでも予備で、 当初の観測目標が達成できた時点で、残りは観測所に返す。 委員長コメント: 今回SACとTACの審査結果は上記の通りとなったが、 これを委員長から拡大MOIRCSチームのPIに伝え、 了承するか、あるいは20夜をGTとして運用するかを 判断してもらう。 委員長はMOIRCSチームの返答を待って、その結果を 光赤外専門委員会に上申することになる。 将来FMOSについて議論する際には、今回の議論が 参考になるだろう。 ■資料  MOIRCSによる深宇宙探査計画(MOIRCS拡大チーム)