観測成果

すばる、崩れゆくシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星をとらえる

2006年5月11日


左上の B核から分裂した破片(矢印)

 地球へ接近中のシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星 (73P/Schwassmann-Wachmann 3、シュワスマン・ワハマン第3彗星とも:以後 SW3 彗星) の本体 (核) のひとつが崩壊しつつある様子を、すばる望遠鏡がとらえることに成功しました。SW3 彗星の核は、これまでに50以上の小さい核へと分裂をしています。その中で、すばる望遠鏡は、B核と呼ばれる彗星核を地球から1650万キロメートルの距離にある段階で撮影し、その周辺に、ごく最近この核から分裂したと考えられる多数の微少な破片を写し出すことに成功しました。

  ドイツのシュヴァスマンさんとヴァハマンさんによって1930年に発見された SW3 彗星は、太陽の周りを約5.4年間かけて一周します。SW3 彗星の軌道は細長いだ円形をしているため、タイミングによっては地球に接近することがあります。発見から1979年までのおよそ50年もの間、観測しても見つからずに行方不明となっていたため、SW3 彗星は「謎の彗星」といわれてきました。

  その後 1995年に太陽へ接近した際に、チリと氷の固まりである核が 3つに分裂したことが確認され、2000年に太陽へ近づいたときは新たに 4 つの核が発見されています。さらに今回の接近時には、数十個に分裂していることが世界中の天文台の観測からわかりました。

  すばる望遠鏡は、人間の目と同じ可視光をとらえる広視野カメラを取り付けて、 2006年5月3日未明に SW3 彗星の核の一つである B 核へねらいを定めました。撮影した画像には、B核本体から出たガスやチリからなる明るいコマや、そこから伸びる尾がとらえられている一方で、ごく最近に分裂し、B核から離れつつある微小な破片を多数写し出すことに成功しました。

  詳細な解析はこれから進められますが、数えてみると13個もの破片が確認できます。ヨーロッパ南天天文台の口径8メートル望遠鏡 VLT (Very Large Telescope) による4月23日の観測では、同じ B核から離れていく8つの破片が見つかりました。すばる望遠鏡がとらえた多くの破片は、B核そのものと同様にコマや尾を出しており、”小さな彗星”となっている様子がみごとに写し出されています。

  これらの微小な破片は大きさが数十メートルと非常に小さいとされることから、短時間で消滅してしまうと考えられています。本研究チームの布施哲治さん (国立天文台ハワイ観測所) は「すばる望遠鏡だけでなく、石垣島天文台などの他の天文台の観測データも合わせて詳しく解析することで、謎に満ちた彗星核の分裂メカニズムに迫りたい」と話しています。

  SW3 彗星は、5月12日に地球へ1200万キロメートルまで近づきました。これは、地球と月の距離のおよそ30倍に相当します。可視光による本観測に引き続き、すばる望遠鏡では赤外線カメラを用いた SW3 彗星の観測を実施しました。さまざまな光の波長で彗星を観測しデータを総合的に解釈することによって、彗星の組成や、その起源の解明に一歩近づくと期待されています。

  ※研究チームメンバー:布施哲治・古澤久徳 (国立天文台ハワイ観測所)、渡部潤一 (国立天文台)、木下大輔 (台湾國立中央大学)、山本直孝 (産業技術総合研究所グリッド研究センター)

天体名: シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、主焦点
使用観測装置: すばる主焦点カメラ Suprime-Cam
フィルター: R (0.65μm)
観測日時: 世界時2006年5月3日
露出時間: 8分
視野:約32.5分角x約23分角
画像の向き: 上が北、左が東
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左下の拡大図
視野:
約1.5分角x約1分角
右図との関係:説明図はこちら
注意: 左端のB核のコマ近傍は明るすぎるため、つぶれて見える

拡大図のない図:低解像度 (500KB)

拡大図のない図:高解像度 (1MB)

拡大図のみ: 矢印あり (63KB)

拡大図のみ: 矢印なし (34KB)


□参考リンク  

 

 

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