トピックス

HSC 補正光学系がすばる望遠鏡に到着

2011年9月1日

  2011年8月6日、HSC (Hyper Suprime-Cam; ハイパー・シュプリーム・カム) の補正光学系がマウナケア山頂のすばる望遠鏡に到着しました。HSC は新たにすばる望遠鏡主焦点に取り付けられる「巨大なデジタルカメラ」で、現在活躍している Suprime-Cam (シュプリーム・カム) のおよそ7倍もの広視野を持ちます。

  今回到着した補正光学系は、光学収差 (注1) や大気分散 (注2) を補正するために HSC に組み込まれるもので、HSC における根幹技術の一つです。補正光学系は7枚からなるレンズで構成されています。それぞれのレンズの直径はおよそ1メートルほど、全体の高さは 1.7 メートル、重さは1トン近くにも及びます。

  非常に精密な光学部品である補正光学系の輸送は、細心の注意を払って行われました。2011年7月6日にキヤノン株式会社・宇都宮光学機器事業所を出発、7月7日に成田空港からアメリカ・ロサンゼルスに空輸され、そこで通関の手続などを経ました。そしていよいよ8月5日にハワイ島・コナ空港に到着しました。翌日の8月6日早朝から、地元の警察車両が先導する中、6時間かけてゆっくりとマウナケア山頂まで運ばれました。

  今回の輸送で使われた梱包も特注品です。梱包の土台に組み込まれている防振ゴムで輸送時の振動を軽減する仕組みになっているほか、複数の温度センサーや加速度センサーが設置され、温度環境や振動が厳重に管理されていました。輸送が完了し、センサーの記録でも問題がないことが判明すると、関係者にはホッと安心の表情が浮かびました。

  すばる望遠鏡では2010年夏に、HSC を組み込むための大規模な加工が行われました。「大型新人」を迎え入れる準備は万端です。今後、HSC の他のユニットも順次ハワイに届き、最終的な組み上げが行われます。

 

リンク:Hyper Suprime-Cam プロジェクトページ

 

(注1) レンズや鏡で像をつくるときに光のにじみやゆがみが生じること。

(注2) 天体からの光が地球大気を通過する際に、波長による大気の屈折率の違いから光がにじむこと。

 

figure

写真1: 2011年8月5日 16:30 コナ国際空港
コナ空港に到着した貨物機から慎重に降ろされる。

 

figure

写真2: 2011年8月6日 4:20 コナ国際空港
まだ夜が明けないうちからマウナケア山頂へ向けての出発準備が進められる。

 

figure

写真3: 2011年8月6日 7:50 ワイコロアロード
マウナケア山頂のすばる望遠鏡を正面に見てゆっくりと輸送される。

 

figure

写真4: 2011年8月6日 12:10 すばる望遠鏡付近
すばる望遠鏡ドームまであと一歩。

 

figure

写真5: 2011年8月6日 12:20 すばる望遠鏡
6時間の長旅の末、無事に到着。

 

figure

写真6: 2011年8月6日 16:00 すばる望遠鏡
慎重に開梱され、輸送中の温度や振動に問題がないことを確認。




画像等のご利用について

ドキュメント内遷移