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日本・中国・英国の研究者からなるチームは、すばる望遠鏡に取り付けた赤外線カメラCIAOを用いて、有名な大質量原始星であるBN天体(注1)の非常にシャープな近赤外線偏光画像を取得しました。その結果、この若い大質量星のまわりに星周円盤を発見しました。これは、これまでに円盤が確認された原始星のなかでは最も質量の大きな例(太陽質量の約7倍)であり、大質量星の形成を解き明かす鍵となる発見です。この研究成果は科学雑誌ネイチャーの9月1日号に掲載されます。
この研究チームは、国立天文台・中国紫金山天文台・英国ハートフォードシャー大学の研究者からなり、この若い星の星周構造を調べるために、赤外線の偏光(波としての光の偏りの性質)を測定しました。図1に示すように、波長1.6ミクロン(Hバンドと呼ぶ;1ミクロンは100万分の1メートル)の偏光画像は「蝶々」のような形を示しており、これは、後述のように、円盤とアウトフローからなるシステムが存在する証拠となります。同じく図1に示した赤外線強度そのものの等高線図では中心の星が明るすぎるため、そのような構造は見えていないことに注意してください。コンピューター上で中心から光線を放出・反射させるモンテカルロシミュレーションでも同じような構造が見られることを確認しました(図2)。
大質量星を形成するメカニズムとして主に2つの説があります。ひとつは、いくつかの低質量星が合体して大質量星となるというもの(合体説)、もうひとつは、重力収縮の結果生まれた円盤状構造からの質量の降り積もりによって生まれるというアイデア(降着説)です。しかしながら、これまでどちらの説に対しても観測的な証拠は乏しいものでした。その理由は、大質量星は低質量星よりも数が少なく、太陽から比較的遠くにあるため、細かい星周構造を見分けることが難しいためです。しかし、巨大望遠鏡と大気揺らぎをリアルタイムで補正する補償光学のおかげで、これまでになく詳細に大質量星を観測できるようになりました。
降着説の場合、軽い原始星の場合と同様に、中心の星に伴って星周円盤、アウトフロー、エンベロープからなるシステムができます(図3参照)。いっぽう、合体説の場合はそうではありません。したがって、大質量星に円盤・アウトフローシステムが存在するかどうかが、この両者を区別する鍵となります。
しかし、若い大質量星は非常に明るく、その星周構造を直接に見ることはできません。この問題は、光の偏りを測定すること(偏光撮像)により解決することができます。偏光は光の波としての性質のひとつで、光の進行方向と垂直に、どの方向にどの程度光が偏っているかを測ることができます。自然の(偏光していない)光も鏡で反射すると、その電場ベクトルは入射光と垂直な方向に偏光します。同じことが、上記の、星・円盤・アウトフローからなるシステムでも起こります。星からの光は、円盤・エンベロープ・アウトフローが作った空洞の壁を照らしています。空洞には物質が無いので、星からの光はさえぎられずに進み、空洞の壁に当たったときに、反射され偏光が生じます。このときの偏光の度合いは大きくなります。いっぽう、円盤やエンベロープの密度は高いために偏光の度合いは下がります。このような理由で、図1のような構造が観測されています。図3および注2にさらに詳しい説明を記しました。
この星周円盤の発見によって、BN天体のような大質量星も太陽と同じく物質の降り積もりによって生まれることが明らかになりました。これは、現在のところ最も重い星の周りの円盤の確実な証拠です。また、本観測により、高解像度の赤外線偏光観測の手法が大質量星の星周円盤の解明に有効なことが示されたので、今後、より大質量(太陽の10倍以上)の原始星の解明が期待されます。
-補足説明-
2005年8月31日 |