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【観測条件】
天 体 名: 冥王星と衛星カロン
使用望遠鏡: すばる望遠鏡(有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置:CISCO (近赤外線カメラ)
フィルター: Jバンド(1.25ミクロン)、Hバンド(1.65ミクロン)、K'バンド(2.13ミクロン)
カラー合成: 青 (Jバンド)、緑 (Hバンド)、赤 (K'バンド)
観 測 日 時: 世界時1999年 6月9日
露 出 時 間: 各バンド 2秒
視 野: 3秒角×2秒角
画像の向き: 北が上やや左寄り、東が左やや下寄り (13度回転)
位 置: 赤経(J2000.0)=16時35分55秒、赤緯(J2000.0)=-10度03分23秒
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【説 明】
冥王星は太陽から60億キロ離れた最も遠くにある惑星で、その直径は2,274 km (地球の約6分の1)しかない。1978年に冥王星の衛星が発見され、カロンと命名された。カロンは直径が1,172kmしかないが、相対的には冥王星の半分ほどもある大きな衛星である。惑星・衛星というよりは、「連惑星」とでも呼ぶ方が適当かも知れない。カロンは冥王星から平均距離で19,640
km離れており、6.387日で冥王星のまわりを1周する。カロンの自転と軌道運動は同期しており、ちょうど月がいつも同じ面を地球にむけているように、常に冥王星に同じ面をむけながらその周囲をまわっている。また冥王星の自転もカロンの軌道運動と同期しており、冥王星は常に同じ面をカロンに向けている。
【左図】
冥王星とカロンは、地球から観測するとわずか0.9秒角しか離れていないために、ごく最近までの地上観測では、大気の擾乱のために像がぼけて二つの天体がくっついた画像しか得られなかった。直径8.2mの高精度主鏡と、マウナケア山頂の安定した大気のおかげで、すばる望遠鏡は冥王星とカロンがはっきり分離している姿を赤外線でとらえた。撮影時のシーイング(大気の擾乱によって決まる見かけの星の大きさ)は0.35秒角だが、実際の冥王星の大きさは0.08秒角、カロンは0.04秒角しかないため、両天体ともその表面が分解されて見えているわけではない。それぞれの天体の実際の大きさを下部に示した。
【右上図】
近赤外線カメラCISCOに搭載された分光器によって、すばる望遠鏡は冥王星から固体のエタンに特徴的な吸収線をとらえることに成功した。固体エタンが発見されたのは初めてのことである。エタンは、太陽系内で惑星が作られていく段階ではほとんど合成されないと考えられており、今回の発見は、冥王星が地球のようにいったん融けてから冷えて固まったものでなく、彗星のように星間物質の組成をそのまま取り込んで形成された可能性があることを意味している。大口径のすばる望遠鏡によって冥王星からでも十分な赤外線を集めることができ、またCISCOの高い分光能力を生かして、細くて弱いエタンの吸収線を検出するという新たな成果が得られた。なお、窒素やメタン、一酸化炭素(以上すべて固体)などの存在は以前から知られていた。
【右下図】
冥王星とカロンを分離することにより、すばる望遠鏡は初めてカロンだけの赤外線スペクトルを観測することに成功した。その結果、カロンの表面に氷が存在することが確認された。面白いことに、冥王星のスペクトルには氷の吸収はなく、また逆に冥王星のスペクトルに見えているメタン(固体)などに特徴的な吸収も、カロンには見られない。両天体で表面組成が大きく異なっていることが分かる。
冥王星の表面組成は、海王星の最大衛星であるトリトンと似ている。海王星軌道の外側にあるエッジワース・カイパーベルト天体という小天体の発見がここ数年あいついでいるが、最近では冥王星やトリトンは巨大なエッジワース・カイパーベルト天体だと考えられている。すばる望遠鏡でこれらの天体を観測することにより、星間物質からエッジワース・カイパーベルト天体が形成され、進化するプロセスが研究できる。冥王星とカロンのような系を理解することは、たとえば地球と月のような「連惑星」の形成を理解する上でも重要であろう。
- ※「冥王星からエタンの発見」については下記に異議の発表なされている。
- Dale P. Cruikshank, Catherine de Bergh, Sylvain
Dout, Thomas R. Geballe, Tobias C. Owen, Eric Quirico,
Ted L. Roush, and Bernard Schmitt, 1999, Science,
285, 1355
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